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「日本ダイダイダイスキ」なヤクルトの右腕・サイスニードが豪快なひげを生やし始めたわけ

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/09/06
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 2023年。今年の夏も本当に暑かった。いや、9月に入ってもまだまだ暑い。朝晩は少しずつ秋の気配を感じるようになったものの、ナイター前の練習が行われる昼間の気温は東京都内でも30度を優に超える。

 ヤクルトのナインでいえば、その中でもいかにも暑そうなのが野手ではドミンゴ・サンタナであり、投手ではサイスニード。どちらもたっぷりと生やしたひげが、どうにも暑そうに見えて仕方がない。

サイスニード ©時事通信社

“暑そうなヒゲ”の持ち主を直撃

 そこでコブシ球場で試合前練習を終え、“日課”である球場内オフィシャルグッズショップでのサイン書きを済ませたサイスニードにひげは暑くないのか尋ねてみると、日本語で「チョット」と言って笑う。そもそもひげをたくわえるようになったのはなぜか? 

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「ひげを剃るのが好きじゃないんだ。毎日剃るなんて嫌だからね。それで大学生の時に生やし始めた。僕の学校(ダラス・バプティスト大学)ではあごひげは禁止されていたから、その頃は口ひげだけを生やしていたんだよ」

 それが彼の「ひげ歴」の始まりだった。高校卒業時のドラフトでテキサス・レンジャーズの35巡目指名を拒否して進学していたサイスニードは、大学在学中の2014年にミルウォーキー・ブルワーズからドラフト3巡目で指名されてプロ入り。もっとも、そこでも“ルール”は大学と変わらなかった。

「ブルワーズもあごひげがダメで、口ひげはOKだった。まだマイナーでプレーしていたんだけど、口ひげだけを生やしていたよ。今のように(口ひげとあごひげをたくわえるように)なったのはその後、アストロズにトレードされてからだね」

 2015年、マイナーリーグでプロ2年目のシーズンを終えたサイスニードは、オフに1対1の交換トレードでヒューストン・アストロズに移籍する。交換相手は、翌2016年に62盗塁を決めてナショナル・リーグ盗塁王になるジョナサン・ビヤー(現メキシカン・リーグ)だった。

トレード先は“ひげ王国”

  当時のアストロズのエースは、2015年にアメリカン・リーグ最多の20勝を挙げてサイ・ヤング賞にも輝いた左腕のダラス・カイケルで、トレードマークは口ひげからつながった立派なあごひげ。アストロズではひげはオールOKで、他にも口ひげ、あごひげをたくわえた選手は何人もいたのである。

 まさにサイスニードにとっては、ひげ剃りから解放される絶好のチャンス。ただし、しばらくは「オフシーズンになったらあごひげだけ剃って、キャンプが始まったらまた生やしていた」という。

 その時代のアストロズのメディアガイドを繰ってみると、移籍1年目の2016年版にはサイスニードの写真はないが、マイナー所属ながらメジャーのキャンプに招待された2017年版は口ひげのみ、そして2018年版には口ひげにあごひげの写真が掲載されている。「嫌いな」ひげ剃りとついにオサラバできたことが幸いしたのか(?)この年はマイナーAAA級で10勝を挙げ、翌2019年には待望のメジャーデビューを果たした。

2017年、まだあごひげがないアストロズ時代のサイスニード
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