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終わったことを後悔するのではなく…ベイスターズファンの相川七瀬がバウアー投手から学んだこと

文春野球コラム クライマックスシリーズ2023

2023/10/14
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応援歌は娘のおかげで“睡眠学習”

 今年は特に、勝敗を常にチェックしなければ!! どうなった!?と思わせてくれる勢いがチームにあったと思います。交流戦で優勝して、あ、これは横浜優勝あるのでは!?ってみんな思ったのではないでしょうか。だからその瞬間を逃すことはできない!みたいな気持ちになりました。瞬間瞬間を一緒に楽しみたいって思わせてくれました。

 あらためて野球って本当に面白いですよね。だって、どんな強いチームも負けることがあるし、調子悪いと言われていても勝ち続けることもある。その時のその選手のエネルギー、昨日はすごかったのにでも今日は全然振るわないっていう時もあるし、毎日が違うから面白い。たとえ初心者でもルールがわからなくても入っていきやすくて、楽しめるんだなと思います。

CS突破を決めた試合のハマスタにて ©相川七瀬

 よく聞かれるのは応援歌歌えますか?という質問です。ある程度まで歌えるようになってきました。というのもYouTubeに上がっている応援歌の動画を娘が寝る前にかけるんです。それがだんだん睡眠学習みたいになって、いつのまにか覚えてました(笑)。ハッピースター☆ダンスも、夜寝る前に「教えてあげるから、一緒に踊ろう」って言われて 踊らされるんですよ。「ちょっと一回踊ってみて。私見といてあげるから」って。おかげさまでしっかり踊れるようになりました(笑)。今では娘も立派なベイスターズファンとなりました。学校では娘の前に座ってる男子が巨人ファン、後ろに座ってる子がヤクルトファンだそうで、3人でずっと野球の話してるらしいです(笑)。だからか、他球団の選手情報にやたら詳しいです。「あのピッチャーは要注意だよ」とか「○○選手は今季は調整しててファームにいる」とか。私はその辺は全然わからないんですけど、打率とか防御率がどうだとか、データをすごく教えてくれて面白いなと思います。

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 私がベイスターズ好きだというのがメディアで流れるようになってから、世のベイスターズファンの方がすごく声をかけてくれるようになりました。テレビ番組のスタッフの方が嬉しそうに「相川さん、僕もベイスターズファンです」って話しかけてくれたり。それで盛り上がってLINE交換したりして、貴重なベイ友を確保しています。そんなベイ友と一緒に観戦しに行きますし、行ってない時も試合が終わるたびに、あーだこーだとLINEが飛び交う。負けた試合の時は辛い胸の内を綴った長~いレポートが届いたりもします(笑)。負けた時は、みんな行き場のない感情を誰かに伝えたいんですね。だけど、終わってしまったことは仕方がない。切り替えて、明日頑張ろうって、ファン同士励まし合っています。

バウアー投手のYouTubeに影響されて

 以前「私たちは応援するしかできないから、負けた日こそ選手に頑張れ!とエールを送りたい」ってツイートしたことがありました。試合を見てて当然、浮かぶ感情はいっぱいある。どうしてあそこでこうならなかったんだろう?とか。だけど私たちファンが負けを残念がる気持ち以上に、戦ってる選手が一番勝ちたかったに決まってると思うんです。負けるための試合なんて、相手のチームも誰もしてないんだって。みんな勝ちたい。だからファンは、何があってもそこはやっぱりぐっとこらえて応援するしかないなって思いました。

 私は、バウアー投手のYouTubeをたまに見るのですが、見ていていつも感心するのは、彼は終わったことを後悔するのではなく、分析して修正していく。そういう風に頭や心を切り替えることができるってすごいなと思うんです。彼にとっては、打たれたことにとらわれるんじゃなくて、なぜ打たれたかを分析して、そこを修正して自分を強化する経験にする。そうすれば負けたことも全部自分の栄養になるんだと彼は教えてくれている気がします。それは野球だけじゃない、自分たちの仕事にも当てはまります。失敗を立て直して、ビルドアップしていく。私自身も自分のちょっとした仕事のつまずきや、今通っている大学の研究がうまくいかない時も、落ち込むのではなく「これはどうやって修正したらいいのかな?」と考えるようになりました。これはバウアー投手の影響を受けてるなあと思います。

 私たちクリエイティブの仕事は、勝ち負けじゃないところに本質があって、自分が失敗だ、うまく歌えてないと思っていても、聞いてくださる方が「良かった」と言えば良いものになる。でもその逆もあります。「いい歌を歌えた!」と自分で思っても必ずしも毎回評価が良いわけでもない。自分がストライクだと思って投げてても、みんなにとってはど真ん中じゃないこともある。一方アスリートの方たちはどんな状況であっても勝たなきゃいけない、これはやっぱりすごい重圧だと思うし、すごい仕事だなってあらためて思います。

 今年、ベイスターズが勝ってCS進出を決めた時に、私のファンで尚且つジャイアンツファンの方から「複雑な気持ちになる」ってメッセージをもらったことがありました。

 その時に感じたのは、私は全ての選手の方たちみなさんをリスペクトしていて、自分の推し球団だけがすごいと思ってるわけではないということでした。私はベイスターズを応援してますが、ジャイアンツの選手も同じように素晴らしくてみんなすごい。だから、やっぱり最後まで自分の推し球団を一緒に応援しようよと返事をしました。それぞれ推しは違ってもみんな根本は同じ「野球」が好きなわけだから。みんなそれぞれ好きなチームは違っても、根本的にはみんな野球面白いねって思ってる、なんて素敵なことなんだろうと思います。試合を見てると、その時は熱くはなるんだけど、対戦相手は「敵」というよりその時戦う相手、もっと言えばその戦いとは選手個人個人の自分との戦い、日々自分の限界を超えていく戦いを見ている感覚があります。昨日よりも今日、今日よりも明日と、常に今の自分を超越するための内なる戦いをしている選手を見る度に「すごいな」「私ももっとがんばんなきゃ」って、励まされるのです。

 今日から始まるCS、ベイスターズの皆さん、ファンの皆さん、二度とは来ない瞬間瞬間を一緒に楽しみましょう!!

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