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バウアーから今永昇太への助言…ベイスターズが“優勝を狙えるチーム“になるために、2024年の宿題

文春野球コラム 日本シリーズ2023

2023/11/01
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常に頭の中を占めるバウアー投手の言葉

 ドラフト会議を終えると、今永昇太投手の来シーズンも含めて数々の複雑な思いと夢が絡まりながら、来シーズンの戦力が足早に固まっていきます。

 その道のりで常に頭の中を占めるのが「優勝を狙えるチームかどうか」という言葉。10月16日、もしカープとのCSファーストステージの第3戦があれば先発のマウンドに立っていたはずのトレバー・バウアー投手が取材に応じた際、来シーズンの契約で重要視する3項目の中で最初に挙げた条件です。

 他の2項目「個人タイトルを狙えるチームであるか」「ファンを沸かせるチームであること」はベイスターズとして現状クリア可能と感じました。でも「優勝を狙えるか」という問いには、深く考えるほどにハードルが高く簡単に答えが出ません。

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横浜スタジアムのマウンドに立つバウアー投手 ©tvk

 バウアー投手のベイスターズに対する分析は的確で率直。こちらが遠回しに質問したことが気恥ずかしくなってしまう程、飾らない言葉で答えてくれます。今シーズンのベイスターズについて「個々に沢山光るものはあった。東、今永、ウェンデルケン、宮﨑、牧……。ベストは尽くしたと思うがもう一歩繋がれば、もっと勝てる試合があった。大舞台を突破できた」と。

 7月1日のドラゴンズ戦で6回2死1、2塁からの挟殺プレーに失敗しオールセーフとなった時にはエキサイトした行動と、その前にあった自らの守備も反省し「優勝するチームの野球ではなかった」と発言。賛否はあったと思いますが、チームへの大きな刺激でした。

 来日当初、ファームで若手キャッチャーとバッテリーを組んだ際には意図をくみ取り投球、益子京右捕手の配球や記憶力、松尾汐恩捕手のコミュニケーション力や守備力を評価。ベイスターズの若手捕手が伸びていると示してくれました。

 今永投手が調子を落とした時期には、フォームの見え方をアドバイスすると共に、たとえ悪い要因があったとしても悩む割合は適度に減らし、どこかで腹をくくらなくては勝負できないと話し合っています。

 中4日で当然の様に長いイニングを投げ続けた闘志。他のローテーション投手の登板間隔や回数に影響を与えたことは否定できませんが、投手陣の意識を高めたことも事実です。

バウアー投手が来年もベイスターズで戦う魅力を感じるために大事なこと

 バウアー投手は常に人生でやりたいことをリストアップしノートに記しています。ベイスターズにいて達成したことを尋ねると「NPB、日本のプロ野球でプレーできたこと。沢村賞にはけがもあり届かなかった」と答えてくれました。

 昨日夕方、バウアー投手はチームとファンへの感謝を残し、帰国しました。

帰国直前のバウアー投手(球団提供)

 バウアー投手が来年もベイスターズで戦う魅力を感じるために「バウアー投手に頼らなくても優勝が狙えるチーム」になることが大事と考えます。既にあと一つの繋がりを生むべく、今シーズン届かなかった「二つ先を意識する走塁」には石井琢朗チーフ打撃コーチが新たに走塁と一塁ベースコーチを兼ねることで新しい血が通い始めています。

 できるチームだと信じています。

 私達アナウンサーが発声活舌練習をする教本の中に『青は藍より出でて藍より青し』という言葉があります。基本となる「あ」の音がしっかり口を開けて正しく出せているかを確かめます。

 本来は弟子が師匠を越えるたとえなので、異なる解釈になってしまいますが、ベイスターズと選手たち、さらには支えるファンとの関係を思い浮かべます。

 ベイスターズの青は、それ自体完璧な華やかさではなく時々で力強かったり頼りなかったり、様々な見え方をします。でも、ベイスターズの選手たちや戦いに惹きつけられたファンはやがて鮮やかな青に染まります。

 2024年シーズンに向け新たに加わるメンバーも、きっと美しい青色を放っていくでしょう。気のせいかもしれませんが、バウアー投手の瞳も来日当初に比べて青みを増している気がするのです。

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