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居間にいるのは泥棒かと思ったらクマだった…「人間とクマの陣取り合戦」に敗北し家に鉄格子をはめる日がくる

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genre : ニュース, 社会, ライフスタイル

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三つ目の要因は、クマが人里で食べ物を得るたやすさを覚えてしまったことだ。空き家に行けば収穫されずに放置されたクリやカキがある。畑に行けばトウモロコシ、果樹園に行けばブドウもリンゴもモモもある。大好きな甘い食べ物にいくらでもありつけるため、学習能力の高いクマは人里通いを始めた。そこで生まれた子グマは車の音にも光にも慣れて育つため、人間の生活圏に侵入することに抵抗がなくなってしまったように見える。

農産物が豊富なだけにクマがその味を覚えてしまった

人間は鈴やラジオを鳴らすだけで、攻撃を仕掛けてくる恐ろしい相手でも、手ごわい敵でもない。それを知った「新世代クマ」が陣取り合戦で優位に立ち、街を闊歩(かっぽ)し始めたのではないか。クマの生態などに詳しい山岳ガイドの知人は「近い将来、家に鉄格子を取り付ける日が来るかもしれない」と話す。絵空事のように聞こえるかもしれないが、秋田県では現実味を帯びてきた。

秋田県自然保護課は「例年は出没がなかった住宅地でも、今年は目撃が報告されている。クマは臆病な性格で、人間の存在に気付けば向こうから遭遇を避ける。見通しの悪いやぶの近くや河川敷を歩くときは、鈴やラジオで音を鳴らして、遭遇を未然に防いでほしい」と呼びかけている。だが、このままクマが増え続けた場合、「音を鳴らす人間に近づけば食べ物がある」と学習する可能性も想定しなくてはなるまい。鈴がクマを呼び込むような事態にならないことを願うばかりだ。

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災害級のクマ騒動は今年で終わりとは限らない

今年のクマ騒動は災害級といえる。来年以降も繰り返されることだって十分に考えられる。解決策を見いだすのは容易ではないが、人間と野生動物の領域を明確に分けるため、やぶの刈り払いは地道に積み重ねなくてはならない。そして何より、人里周辺で徹底して捕獲し、個体数を管理することが不可欠だ。

街に出るクマを駆除することへの批判もあるが、登下校の児童生徒が危害を加えられる事態を放置するわけにはいかない。生け捕りして山へ放ったとしても、農作物の味を覚えてしまったクマは人里へ再び現れる恐れがある。クマとの遭遇が日常化してしまった地域の実情を理解してもらいたい。

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