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《44人目のプロ野球選手誕生》超名門・大阪桐蔭で、10年間スター選手が出ず中学生から避けられる“異常事態” 監督も「僕らの目標は甲子園で勝つこと」と明言

《44人目のプロ野球選手誕生》超名門・大阪桐蔭で、10年間スター選手が出ず中学生から避けられる“異常事態” 監督も「僕らの目標は甲子園で勝つこと」と明言

2023/11/01
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 前出の中学生年代の指導者が続ける。

「甲子園に出場することが目的ならば、今でも大阪桐蔭はベストな選択でしょう。そして、たとえベンチ入りできない2年半を過ごしたとしても有名大学への進学がほぼ保証されている。プロを目指すというよりも、大学・社会人と野球を続けたい選手にとって魅力的な高校になっている」

 大阪桐蔭の西谷監督自身も、教え子がプロで大成することよりもすべての球児が夢に見る甲子園に出場し、勝つことがまずは大事だと公言している。

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 昨秋のドラフト会議で大阪桐蔭の3年生や卒業生に指名漏れが相次いだ際、「OBがプロであまり活躍できていないことの影響は感じますか」と訊ねると、西谷監督はこう答えた。

「プロにも(高卒、大卒、社会人からなど)いろいろな入り方がある。確かに森以降、レギュラーにはなれていないかもしれないですけど、いずれにせよこれからです。僕らの目標は甲子園で勝つことであって、プロ野球選手を育てることが目的ではない。プロを目指している子の結果(進路)がプロならばいいというだけです」

「(佐々木朗希は)大阪桐蔭に入るには値しない選手だった」

佐々木朗希 ©時事通信社

 そういえば、この夏、大船渡高校時代の佐々木朗希(千葉ロッテ)を育てた國保陽平氏(現在は大船渡高校を離れ、盛岡一高野球部の副部長)が面白い話をしていた。

「朗希は、早熟の選手とは対極に位置する晩成型の選手でした。高校入学後も190cmの肉体は成長段階にあり、骨密度などを計測してもまだまだ骨格ができあがっていなかった。中学時代も投げられない時期が長く、140キロを計測したとはいえ、それは3年秋の段階だった。中学までの競争選抜でははじかれてしまう素材であり、たとえば大阪桐蔭に入るには値しない選手だった」

 大阪桐蔭高校の野球部は1学年約20人の少数精鋭体制で、中3時点で日本代表に選ばれるような目立った選手しかその席を手にすることはできない。だからこそ、プロで活躍する選手が少なくとも、大阪桐蔭自体が弱体化している印象はない。

 一方で、「早熟で完成されている」ことは「のびしろがない」という評価と紙一重でもある。

 前田も、不甲斐ないピッチングが続いた今春の選抜ではそんな評価も飛び交った。

前田は大阪桐蔭を取り巻く不穏な空気を払いのけることができるか

 しかしプロで活躍するために、常に成長し続けなければならないことは前田自身が誰よりもわかっている。

「高校野球でいくら活躍していても、プロに入ったら難しいというのは承知しています。とにかくできることの最大限といいますか、常に『やりきる』というぐらいの気持ちで臨まないと通用しないと思う。ようやくスタートラインに立てて、ここから(ギアを)二段階ぐらいあげていきたい」

 大阪桐蔭のOBはプロで大成しない——そんな近年の風説を、前田が打破することをつい期待してしまう。

《44人目のプロ野球選手誕生》超名門・大阪桐蔭で、10年間スター選手が出ず中学生から避けられる“異常事態” 監督も「僕らの目標は甲子園で勝つこと」と明言

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