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ボッコボコの日本ハム 僕は石川直也を絶対、見捨てない

文春野球コラム ペナントレース2018

 開幕シリーズは衝撃の●●●であった。2009年以来、9年ぶりの開幕3連敗である。指折り数えて春の訪れを待ち、球場へ詰めかけたファンにはまことに面目ない。地下鉄東豊線の行きと帰りのテンションの落差である。皆、行きは福住駅に着くなり元気いっぱい、気が急いてちょっと早足くらいになって球場を目指した。帰りはどんよりトボトボである。想像以上にチームが弱い。いや、これは西武が強いのか。他チームとひと当たりするまではモノサシがないんだけど、少なくともこのまま西武と10回連続で戦ったら8、9敗しそうな印象だ。

開幕三連敗を屈したファイターズ ©えのきどいちろう

手探りの試行錯誤が続きそうな今季

 チームが出来ていないんだなと思った。今季は大谷翔平という投打のスーパースターが消え、増井浩俊、マーティン、谷元圭介という勝ちパターンの継投陣が消えた。主戦捕手の大野奨太も消えた。そこへ持ってきて春先、有原航平と鍵谷陽平が出遅れている。以上をフツーにまとめれば「エース不在」「8、9回の中継ぎ、抑え不在」「扇の要不在」の開幕ということになる。先発は開幕がロドリゲス、第2戦マルティネス、第3戦で加藤貴之という、これもフツーにまとめれば「新外国人頼みのローテ」だ。

 まぁ、どう考えても戦力的に薄いのだ。それを承知で栗山英樹監督は「優勝しか考えていない」とコメントする。そう言うしかない。それが監督さんの立場ってものだ。そこに加えてファイターズはこの何年、「大谷翔平の2刀流」前提のチーム編成をしてきた。ことは単純な戦力不足で済まないのだ。今年は設計変更を施す必要がある。投打それぞれに軸や柱を確立する必要がある。

 チームが出来ていないんだなという感想は、僕だけが感じたものじゃないと思う。投手の役割、野手のポジション等、方向性が決まらないままシーズンインしてしまった感触だ。これはちょっと時間がかかるんじゃないか。手探りの試行錯誤はしばらく続きそうだ。こう、見ていてオープン戦っぽいのだ。西武は矢をつがえ弓をぎりぎりと引きしぼった「フルチューン感」があるのに、ファイターズは何かふわっと入ってしまった。そりゃボッコボコにされるよなぁというのが開幕シリーズを見終った率直なところだ。

 で、それじゃ開幕なんかしなければよかったかという問題である。世の中にはそういう考えの人もいて、満足な陣容が整わず、出て行って恥をかくくらいなら最初から出て行かないほうがいいと主張されたりする。極端な話、陣容が整うまでファイターズだけ何年でも開幕延期、というような発想だ。思い出すのは2007年夏、札幌ドームのプレスワーキングルームの喫煙室(当時、僕はまだ煙草を吸っていた)で偶然耳にした地元テレビ局スタッフの会話である。試合前だった。たぶん先輩カメラマンと助手さんといった感じの現場の人たちだ。ぜんぜん悪気のない会話だと思う。テーマは「2006年日本一に続いて、はたして今年も優勝できるのか?」。

 先輩「打線がさっぱり打てないけど、何とか勝てるんじゃない?」

 後輩「いやー、僕的にはこの戦力で日本シリーズ出てほしくないですね。今年は出なくていい。カッコ悪いっす」

 横で聞きながら北海道にはこんな人が出現したんだなぁと感慨深かった。なぜって僕は2006年、四半世紀ぶりの優勝を味わって男泣きに泣いた人間だ。たとえ次の優勝がまた四半世紀後でもその人生を生きるしかないと覚悟している。そんな優勝できるチャンスを前にして「今年は日本シリーズ出なくていい」なんて高飛車なことを言えるはずがない。泥臭い勝ちを拾うんでも、勝率1厘差上に行くんでもいい。僕はファイターズに勝ってほしい。もし日本シリーズで恥をかくんだったら率先して一緒にかく。