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私を「ばあさん」と呼ぶ夫が許せない。顔を見るのも嫌になりそう「あなたんちの亭主は『昨今のジェンダーの常識』についていけてないってことだな」

『70歳からの人生相談』より #5

2024/01/07

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 人生相談

note

 もちろん、俺の言う「ババア」や「ジジイ」は、罵ったりバカにしたりする言葉じゃない。人生の年輪を重ねてきたことへの敬意や、深い親しみの気持ちを込めた「尊称」なんだ。猫なで声で「おばあさん」「おじいさん」って言うほうが、相手に壁を作っているみたいで失礼だと感じる。なんか対等じゃないんだよな。

ソフトな言い方で「呼ばれたくない」という強い気持ちを伝えるのはどうだ

 あなたんちのジジイ、じゃなくて亭主は「昨今のジェンダーの常識」についていけてないってことだな。いや、俺も意味がよくわからずに使ってるけど、要するに古い感覚で言葉を使ってるわけだ。戦前に作られた「船頭さん」っていう童謡には、「今年60のおじいさん」って歌詞がある。そこまで感覚は古くないかもしれないけどね。

回答者の毒蝮三太夫さん ©文藝春秋

 だからといって「あなたは頭が古いのよ! 70代に向かって『ばあさん』って言うのは時代遅れよ!」と責めたら、相手もカチンときてケンカになるだけだ。そこは年の功で、穏やかな言い方でこっちが望んでいる方向にもっていこう。

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「今の私は、まだ『ばあさん』と呼んでもらえる資格はないと思うの。80代になるまで待ってちょうだい。それでもまだ貫禄が足りないと思ったら、90代まで待ってちょうだい。いつの日か、縁側でお茶をすすりながら『おじいさん』『おばあさん』と呼び合うのが似合う夫婦になりたいわね」

 そんなふうに言ってみたらどうかな。亭主もよくわからないなりに「よっぽど言われたくないんだな」と思ってくれそうだ。「毎日『ばあさん』って呼んで、私を早く老けさせたいのね。まだまだ元気で一緒にいたいわ」でもいい。

 とにかく、まだまだ末永く幸せに暮らしてくれ。仲がよくてけっこうだ。「夫婦ゲンカは犬も食わない」ってのは、金婚式を越えた夫婦にも当てはまるみたいだな。

70歳からの人生相談 (文春新書)

70歳からの人生相談 (文春新書)

毒蝮 三太夫

文藝春秋

2023年5月18日 発売

私を「ばあさん」と呼ぶ夫が許せない。顔を見るのも嫌になりそう「あなたんちの亭主は『昨今のジェンダーの常識』についていけてないってことだな」

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