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『笑ってはいけない』シリーズはなぜ17年も続いたのか? 名物プロデューサー・ガースーの証言から見る“大ヒットの真実”

大みそかの名番組をもう一度#2

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『笑ってはいけない』をスタートさせた松本の一言

 特に印象深いのは2018年の『トレジャーハンター24時』。休憩中、松本が遠藤に「歌でも歌ってくれや」と振る。遠藤は得意の長渕剛のモノマネで「コツコツとアスファルトに刻む~」と「とんぼ」を歌い出した。すると「裏腹な心たちが見えて~」のところで松本も声を合わせ歌い始める。さらに「死にたいくらいに憧れた~」で浜田が入ってきて、たまらず爆笑。まさに阿吽の呼吸だった。これは『ガキの使い』本編でのちに『みんなで◯◯を歌い切ろう~!!(かぶらず歌いきれ)』という恒例企画に発展した。

©文藝春秋

 当初はおまけ程度だった休憩時間の面白さを引き出すため「引き出しネタ」も生まれ、そこから田中のタイキック(その大げさにも見えるリアクションに“演技疑惑”まで出てしまう)や浜田の風貌をイジった小道具ネタ、ジミー大西のVTRネタなど定番の流れもできていった。定番といえば、遠藤の元妻・千秋を始めとする家族ネタや方正への蝶野正洋のビンタなど挙げればきりがない。

HPより引用

 そんな『笑ってはいけない』は、松本人志のこんな一言から始まった。

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「笑ったら罰を受けるって、どうかな?」

『ガキの使い』の笑ってしまったら罰金を払う名物企画「七変化」の延長線上にある企画だと、構成作家の高須光聖は言う(『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 公式 絶対に笑ってはいけないキャラクター名鑑』より)。

「人間って『絶対に笑ったらいけない』と縛りをかけられると、ちょっとしたことでも心の中がガタガタくるじゃないですか。普段ならスルーできることでも、妙におかしくなる」と。そこで、以前、罰ゲームでやった『松本一人ぼっちの廃旅館1泊2日の旅!』をミックスして生まれたのが『笑ってはいけない』シリーズなのだ。

 大晦日に放送されるようになると、6~7月には動き出していたという。何しろ、ダウンタウンを始めとする超一流の芸人を笑わせないといけない。しかも、大物芸能人をスベらすわけにはいかない。わざわざ出てもらった以上、カットすることもできない。そのプレッシャーたるや絶大だ。