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クリストファー・ノーランはなぜ“原爆の父”を映画化したのか? 名監督が惹かれたオッペンハイマーの“矛盾と欠点”

クリストファー・ノーランはなぜ“原爆の父”を映画化したのか? 名監督が惹かれたオッペンハイマーの“矛盾と欠点”

2024/01/24
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 クリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」の日本での劇場公開がようやく決まった。アメリカでは昨年7月に公開されて大ヒットし、3月10日に発表されるアカデミー賞では13部門で候補となり、前哨戦のゴールデングローブ賞では5部門を受賞するなど2023年度の賞レースを席巻しているが(米映画サイトIMBbによれば、様々な映画賞の作品賞や演技部門を合わせると1月21日時点で、324ものノミネートを受けている)、日本では公開がなかなか決まらなかった。

クリストファー・ノーランが“話題作”の日本公開を前に語ったこと

 原爆の父と呼ばれたアメリカの理論物理学者、J.ロバート・オッペンハイマー(1904−67)が主人公であること、そして同日に公開された話題作「バービー」と併せたミーム画像「バーベンハイマー」が日本で物議を呼んだこともあり、ユニバーサル映画に関して日本配給ファーストオプションを持っている東宝東和はこれを手放し、ビターズ・エンドが配給することとなった。

© Universal Pictures. All Rights Reserved.

 アメリカでは賞レースに向けて年末に記者会見を開くことが恒例で、今回「オッペンハイマー」チームもオンラインで記者会見を実施。そこでクリストファー・ノーランが日本での劇場公開についての質問に、こう答えた。

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「この映画に関心を寄せてくれている日本の皆さんが、映画を観る機会が出来て、とても嬉しく思います。また、ユニバーサルが現地(日本)の配給ビターズ・エンドと協力し、非常に慎重なアプローチをとって、この題材に関する日本の感性に配慮してくれたことも非常に嬉しく感じます。しかし同時に、この映画は日本以外の世界中で上映されており、日本でこの作品に興味を持っている人たち、聞いたことがある人たちが、映画を観る機会を得ることは適切なことだとも思うんです。来年(2024年)には観られますね」

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 オッペンハイマーはとても葛藤のある人物であり、矛盾の多い人物として映画では描かれている。オッペンハイマーは一時的に国の英雄となるものの、その後、共産主義者との距離の近さから聴聞会にかけられ、公職を追放される。科学者として非常に優秀ではあるが、人の気持ちを逆撫でするような部分があり、敵も多かった。また眉目秀麗でプレイボーイの一面もあった。