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自分の発言は後悔していない

三浦 でも、私は自分の発言に後悔はしてないんです。スリーパーセル発言についても、言葉の選び方についての反省はあります。「ヤバい」っていう軽い表現は使わないほうがよかったとか、「大阪」ではなく「大都市」って言えばよかったとか、「スリーパーセル」というカタカナ語を使わずに「工作員」と言えばよかったとか。でも、スリーパーセルの懸念について発言したこと自体は全く後悔してないです。

 なぜなら、あのとき、松本人志さんたちは、若干運命論的に、アメリカの先制攻撃も仕方がないのかと思いかけていると感じたからなんです。彼らに「開戦説」の恐ろしさを納得してもらうためには、無力感に打ちひしがれていただく必要があったんです。核ミサイルが飛んできたら100万人死ぬ。その現実感もないでしょう。でも、もし仮に核弾頭を米軍が全て破壊できたとしても、まだ日本はスリーパーセルの脅威を受けるよ、と指摘したことで、スタジオは無力感に包まれましたが、それこそが私が意図したことでした。

三浦瑠麗さん ©榎本麻美/文藝春秋

──このときも、三浦さんは大阪にいる在日コリアンに対するヘイトを助長したと一部で批判されました。

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三浦 私は在日コリアンがテロリストだとは決して言っていませんし、そういう見方をしてしまうことは差別主義的だと思っています。私がなぜこのとき謝らなかったかといえば、「これは差別をめぐる問題である」という言説に加担することになるからです。ある友人からは「僕は、三浦さんは差別感情で言ってないって分かってる。でも、今はとにかく留保はつけずに謝罪したほうがいい」とアドバイスを受けました。でも、私は「いや、それはちょっと無理です」と断りました。なぜなら、私がもしもそこで炎上したからといって「私は差別を助長しました」と謝ったら、今後スリーパーセルの存在について語ることは差別を助長することになると認めたことになるからです。

──自分の意志を曲げなかった子供の頃と同じですね。

三浦 私を型にはめようとする人間に対しては、リトルミイ(「ムーミン」の登場人物)並みに歯を食いしばって抵抗しますね。噛みつくこともあるかもしれません(笑)。

※『世情』 作詞・作曲 中島みゆき

日本に絶望している人のための政治入門 (文春新書)

三浦 瑠麗(著)

文藝春秋
2015年2月20日 発売

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三浦瑠麗さん ©榎本麻美/文藝春秋

三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。主著に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『国民国家のリアリズム』(角川新書、共著)。2017年12月、第18回正論新風賞を受賞。