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グリム童話「赤ずきん」で"金銭的な利益を得た唯一の登場人物"は誰か…真剣に読み返すとわかる"意外な勝者"

source : 提携メディア

genre : エンタメ, ライフスタイル, 読書

note

【池上】「何ごと」は、悪事かもしれません。そういう場合には、そのインテリジェンスの技に騙されないようにする必要があるでしょう。

【佐藤】そうですね。大きな悪事を企てる人間は、意外に嘘はつかないものです。

「腹に石を詰める」という残忍な方法で狼を殺した赤ずきん

【池上】話は変わりますが、NHKのEテレで童話・昔話の登場人物を裁判にかける『昔話法廷』という番組をやっていて、この「赤ずきん」も取り上げられています。

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【佐藤】やはり通常の読み方とは違った視点から、物語にスポットを当てていて、面白いですよね。例えば、「浦島太郎」では、地上に帰ると言い出した浦島太郎に危険な玉手箱を手渡した罪で、乙姫が裁かれます。

【池上】「赤ずきん裁判」の被告は、狼を腹に石を詰めるという残忍な方法で殺害した赤ずきん。言われてみれば、あまり聞いたことのない殺害方法ですが、これは狼に呑み込まれたショックで心神喪失状態になっていたから、という凝ったつくりになっています。

昔話には、勧善懲悪のようなわかりやすいパターンのものが多いのですけど、やはりいろんな読み方が可能で、そうすることで生き方を学ぶテキストになるということが、こういうのを見てもよくわかります。

池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト
1950年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHK入局。報道記者として事件、災害、教育問題を担当し、94年から「週刊こどもニュース」で活躍。2005年からフリーになり、テレビ出演や書籍執筆など幅広く活躍。現在、名城大学教授・東京工業大学特命教授など。6大学で教える。『池上彰のやさしい経済学』『池上彰の18歳からの教養講座』『これが日本の正体! 池上彰への42の質問』『新聞は考える武器になる  池上流新聞の読み方』『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』など著書多数。
佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
グリム童話「赤ずきん」で"金銭的な利益を得た唯一の登場人物"は誰か…真剣に読み返すとわかる"意外な勝者"

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