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「いくら掃除をしてもこの臭いは消えません」女性メンバーが放尿→不潔すぎてミミズが発生したことも…伝説のライブハウス「新宿ロフト」が出禁にした「ジャンル」の正体

『1976年の新宿ロフト』より #1

2024/01/27
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 いくらこの異様な光景を面白がっているとはいえ、そして何でもありの懐の深い新宿ロフトだから許されているとはいえ、私自身でさえこの乱暴狼藉が罷り通る状況にはいささかうんざりしていた。

「もし俺が近隣住民だったら、先頭に立って『ロフト立ち退き運動』をしているに違いないな」なんて苦笑いと複雑な気持ちが交錯する中、私は薄暗い地下室へ入った。ステージではちょうど、吉野大作&プロスティテュートのリハーサルが終わったばかりだった。

「見てください、この臭いと汚れ!」

 店内には、店長以下、PA、照明を入れたスタッフ全員が揃っていた。当時の店長が口火を切った。

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「悠さん、もうノイズ・バンドのライブはやめてください。昨日のようなライブは勘弁してほしい。もしわれわれの意見が聞き入れられないのなら、全員辞めさせてもらいます」

「えっ、何があったの?」と私はとぼけてみせた。彼らは怒りが収まらぬ様子でこう言った。

「見てください、この臭いと汚れ! いくら掃除をしてもこの臭いは消えません。これでは1週間以上、ここで食事は出せません」

 前日に出演したノイズ・バンド=非常階段はスキャンダラスなステージで知られた。狂乱のノイズが鳴り響く中、ステージ上でメンバーが汚物やペンキ、牛乳、納豆、生魚、釣り餌用のミミズ、ゴカイなどを撒き散らし、手当たり次第に物をぶち壊して暴れ回る。

 挙げ句の果てには女性メンバーがしゃがんで放尿までするのだ。いくら場内にビニールシートを敷き詰めても不快な異臭が何日間も店全体にこもってしまうし、ミミズが店内に住みついてしまうこともあった。

 私自身は非常階段のようなバンドを面白がっていたのだが、店長とスタッフの直訴もあり、やむなく出入り禁止にするほかなかった。

1976年の新宿ロフト (星海社新書)

1976年の新宿ロフト (星海社新書)

平野 悠 ,牧村 憲一

星海社

2024年1月24日 発売

「いくら掃除をしてもこの臭いは消えません」女性メンバーが放尿→不潔すぎてミミズが発生したことも…伝説のライブハウス「新宿ロフト」が出禁にした「ジャンル」の正体

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