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「一気に和山やま作品のとりこに」映画『カラオケ行こ!』で綾野剛が追求した究極の“かみ合わなさ”

2024/01/18

source : 提携メディア

genre : エンタメ, 映画, 芸能

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綾野剛さん。

 普通の中学生が、ある日突然ヤクザに頼まれ、カラオケのレッスンをすることに――。あり得ない出会いからはじまる奇抜なストーリーと、ゆるい笑いで2021年マンガ大賞3位をはじめ、マンガ賞に続々ランクインした漫画家・和山やまさんの超人気コミック『カラオケ行こ!』が映画化。絶対に歌がうまくならなくてはいけないヤクザ・成田狂児を演じた綾野剛さんに、作品の魅力についてお聞きしました。


和山先生の世界を生きられるなんて、こんな幸せなことはない

――綾野さんは、もともと原作のファンだったと伺いました。今作への出演オファーをいただいたとき、どのようなお気持ちでしたか?

『カラオケ行こ!』で和山先生の作品に出合いました。繊細な緊張感が漂うなかにユニークさも混在している希有な作品で虜になり、『女の園の星』『夢中さ、きみに。』と、ほかの作品も一気に読ませていただきました。

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 映画のお話をいただいたときは、驚きと畏怖心もありましたが、和山先生の世界を生きられるなんて、こんな幸せなことはないと素直な感情が生まれました。

――和山先生の作品のお好きなところを教えてください。

 和山先生の作品は“半径三メートル以内”の話をとても大切にされている一方で、そこに描かれる登場人物の造詣や内省はものすごく深い。そういう視点の鋭さ、表現のユニークさは、ほかの誰にも真似できない唯一無二の作家さんだと尊敬しています。

――和山先生の作品は、リアルな世界を描いているようで、絶対にあり得ないファンタジーを描いています。実写化では、どのようなところに苦労されましたか?

 本作は「マンガの実写化」ではなく、「マンガを映画に」を目指した作品です。

 山下敦弘監督と、脚本の野木亜紀子さんと、原作者の和山やま先生という、それぞれの煌めく「才能」が融合し、映画という形に昇華されています。そしてマンガでは体感できなかった新しい感覚が生まれた。

 いわゆるストレートな「原作マンガの実写化」ではなく、「山下監督の新作映画」と呼ぶべき作品です。本作では、とにかく「かみ合わない」を表現しなくてはいけないことに、苦労しました。