文春オンライン

食べられるのはインドのマクドナルドだけ…「マハラジャマック」の中身とは?

『インドの食卓 そこに「カレー」はない』より#2

2024/03/25
note

 世界100以上の国と地域で、約4万もの店舗を構える(※2021年11月末時点)マクドナルド。日本発祥の限定メニューと言えば「てりやきマックバーガー」や「えびフィレオ」が有名だが、インドには「マハラジャマック」という、なんとも気になるメニューがある。その中身とは?

 南アジア研究者がインド料理のステレオタイプを解きほぐした『インドの食卓 そこに「カレー」はない』(笠井亮平/ハヤカワ新書)より、一部抜粋して紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)

インドのマクドナルド限定メニュー「マハラジャマック」とは? ※写真はイメージです ©AFLO

◆ ◆ ◆

ADVERTISEMENT

マクドナルドなのに「ビッグマック」も「チーズバーガー」もない

 インドにもマクドナルドがある。首都デリーであれば街中の所々でおなじみの黄色い「M」のロゴを見かけるし、空港のフードコートにも入っている。どこもインド人や外国人の客でにぎわっており、ハンバーガーやポテトをほおばったりドリンクを飲んだりしている。

 しかし、インドのマクドナルドには、他の国とは異なる大きな特徴がある――ビーフを使ったハンバーガーがいっさいないのだ。インドでは人口の約8割をヒンドゥー教徒が占めている。彼らの教えでは、牛は「神様の乗り物」として神聖視されているため、ビーフは禁忌なのだ。

『インドの食卓 そこに「カレー」はない』(笠井亮平/ハヤカワ新書)より

 これはハンバーガー系の外国ファストフードチェーンにとって大きなハードルとなる。マクドナルドであれば、看板メニューの「ビッグマック」や「チーズバーガー」をはじめ、主力商品を出すことができなくなる。しかし、インドという巨大市場への参入は捨てがたい。

 そこでマクドナルドは、1996年にムンバイ郊外でインド1号店をオープンした際、他国にはない一連の斬新なメニューを導入した。それを代表するのが「マハラジャマック」だ。 

 人気を博したインド映画の邦題になっていることで知られているように、「マハラジャ」とは「王様」を意味する。ビッグマック的な位置づけにふさわしいネーミングと言える。