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「幸田文が、男はいいもんだなあと捨てた男のよさを書いている」小池真理子、川上弘美が見た18人の女性作家の“さが”

2024/03/23

source : 週刊文春WOMAN 2024年春号

genre : ライフ, 読書, 社会

note

川上 住んでいる小池さんの言葉に、リアリティーがありますね(笑)。

声高な主張はせずとも、自らの思うところに依って生きている

小池 野上のそのときの山荘の離れが、軽井沢高原文庫に移築されているんです。見に行きましたが、小さくて素朴で民話の中に出てくる家そっくり。茅かや葺ぶき屋根で、障子が張られているだけみたいな。

小池真理子(右)さんと川上弘美さん ©文藝春秋

川上 寒すぎる……。

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小池 そういう中で火を熾して、ご飯に佃煮をのせて食べるのが一番おいしいと書いています。一人暮らしを楽しんでいた。孤独、寂しさとかはなかったみたい。

「六月になったばかりの山はまだ寒かった。私はストーヴに薪をどんどん投げこみ、つくだ煮と玉子で自炊の晩御飯をすましてから家にハガキを書いた。『……天下の豪奢をきわめています。』」(「秋」より)

川上弘美さんが選者をつとめた9人の筆者

川上 ともかくこの18人、声高な主張はせずとも、自らの思うところにしっかり依って生きている。

小池 本当に。幸田文が「男はいいもんだなあ」と言っている。自分は男を捨てたけれど、捨てた男のよさを書いているんですよね(笑)。

川上 高峰秀子の芯の強さ、森茉莉の変幻自在さ、吉屋信子のリベラルさ。白洲正子もまた、決して折れない強さをもって、どこへでも行ってしまう。

●小池真理子さんと川上弘美さんの12年間にあったできごとや、エッセイと小説に出る“自分”の違いなど、対談の全文は『週刊文春WOMAN2024春号』でお読みいただけます。

こいけまりこ/1952年東京都生まれ。1996年『恋』で直木賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。近著に『日暮れのあと』など。

かわかみひろみ/1958年東京都生まれ。1996年「蛇を踏む」で芥川賞、2016年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。近著に『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』など。

text:Mariko Naito photographs:Atsushi Hashimoto

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