2012年に『烏に単は似合わない』で松本清張賞を史上最年少で受賞。デビュー作から続く阿部智里さんによる、壮大な和風ファンタジー「八咫烏シリーズ」は、最新刊『望月の烏』で累計200万部を突破、24年4月6日からNHKアニメ「烏は主を選ばない」が放送開始される。さらにこの度、文庫やシリーズで活躍が目覚ましい作家に贈られる、第9回吉川英治文庫賞を受賞した阿部さんが、3月5日受賞記者会見で喜びを語った。
編集者という仕事と役割が問われる時代に
――阿部さんこの度は、第9回吉川英治文庫賞ご受賞おめでとうございます。受賞のお気持ちと累計200万部という大ヒット作品である「八咫烏シリーズ」へのお気持ちなどをお話しいただければと思います。
阿部 まず今日私が申し上げたいのは、感謝しかありません。感謝にもいろいろ種類があるので、ひとつひとつ申し上げたいと思ってます。まず、この賞をいただけたこと、大変光栄に思います。本当に私が尊敬する先生方が、これまでの受賞者でたくさんいらっしゃいますので、その中で後輩になれたことが個人的に大変嬉しいです。
ただ、受賞というのは当然のことではありますが、私1人だけの力では全然ないと思っています。先ほど200万部という風に言っていただけたんですが、作家の仕事は書くことで売ることではありません。この200万部という数字は、売る人たちの努力、読者さんたちに届ける努力をした人たちのある意味努力の結晶だという風に思ってます。
この感謝の言葉は順々に申し上げますと、まず選んでいただいたこと、そこにまず本当にありがとうございます。そして、ここに至るまでに沢山の読者さんが読んで面白いと言って応援してくれたこと、そこにもありがとうございます。家族、友人たち、私個人を支えてきてくれた方たちにもありがとうございますと言いたいです。
その上で、私が今回の受賞に関して、一番お礼を申し上げたいと思っているのは編集者の方たちです。今結構、編集者の仕事というものがいろいろと一体どういう仕事なのか――個人が自力で本を作れる時代になっている中で、果たしてその役割とはいかなるものかと問われている時代だと私は思います。