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「かゆみ」を我慢できないのと同じ…ギャンブル依存症の人の脳内で起きている「負の強化」という不快現象

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, ヘルス, 社会

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快楽を得ても不快になる恐ろしさ

もちろん依存物をたくさん使用することによって、たとえばアルコール依存症の場合、多量飲酒によって肝臓が悪くなる、ギャンブル依存症の場合にはお金がなくなる、人間関係が悪くなる、インターネット依存症やオンラインゲーム依存症の場合は学業成績が不振になるなど、依存症特有の悪影響によって「不快」になる場合もあります。

それらの悪影響による「不快」解消のために、さらに依存物を使うこともあるでしょう。しかし世の中には肝臓が悪いことや、お金がないこと、人間関係が悪いこと、学業成績が不振になることをあまり気にしない人もいます。そういう人たちでも、依存症の負の強化によって脳内が「不快」になると、やはりその解消のために依存物から離れがたくなってしまうのです。

要するに、依存症者の場合は、快楽をもたらす依存物を使えば使うほど、その人の不快度は増していきます。

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依存症者にとっても、その周囲の人にとっても、依存物による「快楽を得られるけど不快になる」のを体感的に理解しにくいということが、この病の最もやっかいなところかもしれません。こうして依存症という病は重篤化してしまうのです。

中山 秀紀(なかやま・ひでき)
旭山病院精神科医長
1973年、北海道生まれ。医学博士、医療法人北仁会旭山病院精神科医長。専門領域は、臨床精神医学、アルコール依存症。2000年、岩手医科大学医学部卒業。04年、同大学院卒業。岩手医科大学神経精神科助教、盛岡市立病院精神科医長を経て、10年より久里浜医療センター勤務。同年、「第45回日本アルコール・アディクション医学会優秀演題賞」受賞。19年、「第115回日本精神神経学会学術総会優秀発表賞」受賞。11年より、インターネット依存症治療部門に携わる。同センター精神科医長を経て、20年4月より現職。
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