昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

現場報告 銀行員がどんどん辞めている

「人員・店舗・預金」の3つの過剰が銀行の足枷に

2018/04/16

「約100人の同期のうち、すでに50人ほどが銀行を去りました」

 こう語るのは有力地銀で入行8年目のA氏30歳。有名国立大を出て支店での個人・法人営業も経験、企画セクションで社長直轄の戦略立案を担ったこともある。

「金融商品のノルマに嫌気がさした人も多かったのですが、結局、安定していると思っていた銀行の将来が見えないことに不安を感じた人が退職したのだと思います。それが証拠に転職先は地元の県庁や市役所など公務員が圧倒的に多いです。もはや銀行は安全志向の人のための職場ではなくなりました」

©iStock.com

 かつて就職市場で銀行の人気は抜群に高かった。その背景には、給与の高さに加え、その「安定性」があった。つまり高給で「潰れない会社」だと思われてきたのだ。

 しかし、それもすっかり過去の話だ。銀行は、今、大転換期を迎えている。

銀行は「安定性」を演出

 預金者から資金を集め、企業に融資する銀行融資は、「お金を借りる人(企業)」と「お金を貸す人(預金者)」の間に第三者(銀行)が存在するという意味で「間接金融」と呼ばれ、高度成長期にはうまく機能し、銀行と企業は「長期に安定的な関係」を築いた。だが、一見「安定的」に見える間接金融も、実は、決してリスクの低いビジネスとは言えない。自己資金の何倍ものお金を企業に貸し出す以上、企業からの返済が滞れば、とたんに屋台骨が揺らぐからだ。貸出債権の価値も、企業の返済余力に左右されるので外側からは見えにくい。だからこそ銀行は、「安定性がある」「信用がある」と顧客や市場や世間に思いこませる必要がある。

 事実、メガバンクは、巨額の貸し出し資産、数万の行員を擁し、大手町や丸の内の一等地に巨大な本部ビルを構える。多くの銀行員は高学歴で、スーツを生真面目に着込む。これらはいわば銀行の「安定性」と「信頼性」を演出する舞台装置だ。

 しかし、だからと言って銀行の経営が実際に安定しているとは限らない。最近でも日本のバブル崩壊後の不良債権問題や米リーマンショックなどで金融は危機にさらされた。

 ただ、こうした金融危機に際しても、多くの銀行は、「経済を安定化させる」という大義名分の下に投入される公的資金によって救済された。「だから、銀行が潰れることはあるまい。最後は政府が公的資金で救ってくれる」――おそらくこんな見方も「銀行は潰れない」という神話の根拠になっているのだろう。だが、今後も通用するとは限らない。

来店する人の数は、ここ10年で2割~3割減

大転換期を迎えている日本の銀行 ©文藝春秋

 しかし、そのことよりも銀行にとってより重大な問題がある。それは、これまでの銀行のあり方が、そもそもビジネスとして限界を迎えているのかもしれないということだ。

 試しに駅前の銀行の支店をのぞいてみれば気づくだろう。そこに、かつてのにぎわいはない。あるメガバンクの幹部はこう嘆く。

「ネットやスマホの利便性が高まり店舗に来店する人の数は、ここ10年で2割~3割は減りました」

 銀行を取り巻くビジネス環境の激変に危機感を抱くメガバンクは、人員削減計画を相次いで発表している。

 たとえばみずほフィナンシャルグループ(FG)は、2017年11月、組織構造を大幅に見直す計画を発表した。7.9万人の行員のうち1.9万人を2026年度末までに削減、約500店ある店舗も24年度末までに約100店舗減らすという。三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループも、これに追随し、3メガバンク合計で、3.2万人超の人員が削減されることになった。

この記事の画像