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SMAP“公開謝罪番組”が残した深い傷…「放送作家として参加した僕も戦犯である」

『もう明日が待っている』『最後のテレビ論』を読む

2024/04/21
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『SMAP×SMAP』『¥マネーの虎』『A-Studio』などなど、放送作家として手がけたヒット番組は数知れず。ほかにも映画『ONE PIECE FILM Z』で脚本担当したり、プロレスラー・ダンプ松本の人生をベースにしたNetflixドラマ『極悪女王』で企画・脚本・プロデュースを担ったり。稀代のヒットメーカーたる鈴木おさむが、昨年突如として「断筆宣言」。本年3月末日をもって、放送作家・脚本家の看板を下ろした。

 50歳になる手前のここ数年「おもしろく生きてないな」と感じられ、新しいことに挑戦したくなったというのが、本人談の断筆理由。そのあたりのいきさつや心境がありありと知れるのが、作家最後の日にあたる2024年3月31日付で刊行した2冊の本だ。

「週刊文春」連載コラムをまとめた最後のテレビ論と、小説の体裁をとって「SMAPとその時代」を事細かに描き出したもう明日が待っている

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SMAP ©文藝春秋

骨太の仕事論として読める

『最後のテレビ論』で鈴木おさむは、テレビへの思いやテレビ界での見聞を、できるかぎり書き残そうとする。

 放送作家見習いとしての仕事初日には、ディレクターからいきなり、

「ねえ、鈴木君、君には何があるの?」

 と問われた。「おもしろいものを書くには、まずおもしろい人にならないといけないのだ。」と悟った鈴木は、自分や周りの人の人生そのものを最高のエンターテインメントとして捉え、「なんでも見てやろう、やってやろう」の精神でテレビ界を駆け抜けていく。

鈴木おさむさん ©文藝春秋

『SMAP×SMAP』高倉健に1年間毎週手紙を送り続け…

 1996年の立ち上げから2016年の終了まで併走した『SMAP×SMAP』をはじめ、人気バラエティー番組がどうつくられていったのか覗き見られるのは興をそそるし、苦手意識があったという連ドラの脚本書きで、独自の境地を拓いていくくだりは、つい拳を握りしめて応援したくなる。

 続々と紹介される同僚テレビマンたちも魅惑的だ。破天荒なキャラクターぞろいで、同時にこぞって一流の仕事人でもある。