2016年1月18日。あれから8年の月日を経ても、心を蹂躙され虚しく頭を垂れるSMAPの5人の姿を忘れることはありませんでした。
あの日、一体何があったのか。5人が悪かったのか、1人が悪かったのか、それとも他の誰かが悪かったのか。誰が彼らを“殺した”のか。
「誰が? ねぇ、誰が彼らを?」
マザーグースの詩を唱えるようにテレビの前で震えながら、真実を知りたくてもがき涙したことをよく覚えています。
時は流れ、ようやく今。「悪かったのは自分かもしれない」と言いながら鈴木おさむさんが本書を手渡してくれたように思いました。
『もう明日が待っている』は、20年以上SMAPに伴走してきた放送作家である鈴木さんが、彼らの魅力の開花から終幕まで、表からは見えなかった風景をつまびらかにしてくれた“小説”です。
“小説”と銘打ってはあるけれど、綴られた物語はすべて本当のことだろうと、私は受け止めました。
「19歳の自分には、もはやアイドルという存在が滑稽にすら見えた」
鈴木さんが初めて“彼ら”を知ったのは1991年。
バンドブームの最中にアイドルとしてデビューした彼らを見て、「19歳の自分には、もはやアイドルという存在が滑稽にすら見えた」「自分と同じ年で「アイドル」をやっていることを、可哀そうとすら思った」と書いています。
しかし彼らは、お笑いやバラエティーにも果敢にチャレンジし、王道のアイドルが決して歩まない獣道を切り拓いていきました。そして気がつけば、冷ややかだった人さえときめかせ、声援を浴びるようになっていたのです。
その後、メンバーの1人「タクヤ」のラジオ番組を担当することになった鈴木さんは、本人と初対面することになりました。
「第1章 素敵な夢をかなえておくれ」にはその時の“何かが始まる”という高揚感がこのうえなく生き生きと記されています。
スタジオに入ると、既に彼は到着していて、窓枠に肘をかけて立ちながら台本を読んでいた。
窓から差し込む光が、彼を囲んでいて。
彼は「こんちは」と言って名前を名乗った。
僕と同じ年。1972年生まれ。同学年。
僕が同じ年だと知ると、彼は「タクヤって呼んで」と言った。
アイドルだからこそナメられたらいけないと勝手に思い込んでいた自分は、最初にかましてやらなきゃ! とイタい使命感のようなものを抱いていた。だから初対面の彼に向かって、いきなり、彼らが出演していたとあるバラエティー番組のことを話し、「俺、あの番組嫌いなんだよね」と言った。
すると、タクヤは笑いながら。
「俺も」
そう言って手を差し出してきた。
僕はその手を強く握った。(「第1章 素敵な夢をかなえておくれ」より)