公約通りに関税を上げて世界経済を混乱に陥れているトランプ大統領だが、政府効率化省のトップとなったイーロン・マスクを筆頭に、テック業界の大物たちが支援者に名を連ねたことが注目されている。1月の大統領就任式には、マスクのほかにジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、ティム・クック、セルゲイ・ブリンら、テック長者らが参列した。

大統領就任式に参加したザッカーバーグ氏、ベゾス氏、マスク氏ら ©時事通信社

バイデン政権への反発。キーワードは「暗号通貨」

 そもそもシリコンバレーのテック業界は、民主党支持の傾向が強かった。では、なぜテック業界の大物たちがトランプ支持に回ったのか。評論家の中野剛志氏のレポートで、その理由が明らかにされている。キーワードは「暗号通貨」である。

中野剛志氏 ©文藝春秋

 テック業界の大物たちは、技術革新による極端な自由至上主義の実現をめざしていることから、テクノ・リバタリアンと呼ばれる。彼らはブロックチェーンやAIなどの先端技術を駆使して、中央集権的な既存の政府ではない、分散化された自由な「ネットワーク国家」を建設しようと夢見ている。

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トランプ大統領とマスク氏 ©時事通信社

 そこで使われるとされる通貨は、政府が独占的に発行するものではなく、暗号通貨だ。テクノ・リバタリアンが暗号通貨を好むのは、このためだ。

 ところが、バイデン政権は暗号通貨を規制しようとした。米証券取引委員会(SEC)は、顧客の暗号通貨を保管する企業がそれを貸借対照表に「負債」として計上するようガイドラインに定めた。これにテック業界の大物たちは反発したのだ。