「公開処刑」と呼ばれる悪夢の裏で何が起きていたか
「彼らが所属事務所から独立するのではないか」という噂が巷を駆け巡り、“世間を騒がせたことを謝罪する”という意味不明な光景がテレビで流れました。
黒いスーツ姿で、硬い表情で並んだ5人が何を謝っているのかを明言せずに次々と謝罪の言葉だけを述べる謎の時間。私たちは、彼らに謝ってもらうことなど何もないのに。
あろうことか、それはいつも幸せをくれた、震災の後に日本中を勇気づけたあの番組で放送されました。後に「公開処刑」と称される悪夢の映像。
私たちは、彼らが苦悶の表情を浮かべ、意に沿わぬことを言わせられる姿を見せられたのです。
まさかテレビに心の息の根を止められようとは、思いもしませんでした。
ただひたすらに口惜しく、どうしてこうなったのか知りたいと切望しました。
結局、SMAPはその年の年末に解散し、8年後の今もメンバーたちはそれぞれに活動しています。それでも、あの日の答えを求めて心は疼いたままでした。
その答えが『もう明日が待っている』にはありました。
いつも彼らと一緒だった……否、“彼ら”のひとりだった鈴木さんは書かずにいられなかったのでしょう。
一方的で巨大な力にひれ伏すしかなかった5人の口惜しさ。
己の矜持を踏みつけられても、見殺しにせざるを得なかった鈴木さんの無力感。
あの日起きたことが仔細に記された本書は、放送作家としてのご自身と、あのときの彼らに向けた“鎮魂歌”なのだと思います。“小説”の中で何が起きたか、そして実際に何が起きたかは自身の目で確認してください。
鈴木さんが鳴らした弔いの鐘は、少なくとも長く私の胸にかかっていた霧は晴らしてくれました。そしてまた、アイドルと所属事務所の関係を考えるための警鐘にもなったように思います。
時代は巡り、彼らも前に進んでいます。
それでもやはり、「もし時間を巻き戻せたら、力ずくであの会見を阻みたい!」と今もって思ってしまうのです。
鈴木おさむさんは、SMAPだった。
私たちもまた、SMAPだった。
SMAPだった。