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 5人もそのさりげない意図を読み取り“阿吽の呼吸”で夕食はお好み焼きに決まります。

 結果、5人がお好み焼きをつつきながら、普段のSMAPからは出てこなさそうな本音で語り合う姿を私たちは拝むことができました。

「あの企画の裏で、こんなことが起きていたのか」と驚き感心するバックステージ観覧ツアーのような趣きも、本書にはあります。

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「オサムは何を信じてる?」

 そして、国民的アイドルが背負った期待の重さにも打ちのめされました。

 それは、2011年3月21日のこと。東日本大震災が各地にむごい爪痕を残し、日本中が不安に揺れていたなか、彼らはバラエティー番組の生放送に踏み切りました。

 ベクレルやシーベルトという耳慣れない言葉が飛び交うなかで、東京から避難する人がいる。もちろんそれは悪いことじゃない。でもイイジマサンは「自分が住んでいるところを離れられない人が沢山いて、みんな不安になっている」と東京からの生放送を提案します。

 5人が東京から生放送をすれば、それだけで安心する人が沢山いるはずだと。

©文藝春秋

 未曾有の大震災の10日後。

 2011年3月21日の22時から。

 そんなこと、他に誰もやろうとしない。

 やりたくない。

 だからやらなきゃいけない。

 彼ら5人は。

 生放送が始まる前に、タクヤが僕に言った。

「オサムは何を信じてる?」

 色々な噂が流れる中、何を信じてどう行動してるのか? と聞きたかったのだろう。僕は答えることが出来なかった。

 タクヤが去ったあとも考える。僕は何を信じてるか? 1つあるとしたら、自分は今、ここにいて、この番組に参加すると決めた自分を信じているということ。

(「第7章 くじけずにがんばりましょう」より)

「ぽぽぽぽーん」と歌うACのCMと震災の情報番組が繰り返し流れ、「もう笑ってテレビを観る日常は戻らないんじゃ?」と思っていたあの日。5人は自分たちの名前を冠した番組で、生放送で「今の僕たちに何が出来るのか、皆さんと一緒に考えたい」と語りかけました。その頼もしさ、ありがたさを思い出すと、今も胸に込み上げるものがあります。

 日本中の人に愛され、“世界に一つだけの花”である彼らが背負っていた宿命。それはどんなときもそばにいて、人を励まし、笑顔を咲かせる存在であることだったのでしょう。

 その5人の眩い輝きが、悲劇に変わった“あの日”も『もう明日が待っている』には登場します。

 2016年1月18日。

 鈴木さんが若き日のタクヤさんと握手を交わしてから20年以上が経ち、守るべきものも、呑み込まなくてはならない不条理も増えたなかで、ついにその日が訪れます。