「人はいつ死ぬかわからないし、地位も名誉も財産も、いつまでも手にしていられるか保証もない」
一度は音楽を捨て、ピアノから離れた三浦謙司。それでも彼が再び音楽の世界に戻った理由は、「未練」でも「野心」でもなかった。
インタビュー後編では、彼がピアニストとして復帰した本当の理由と、これから見据えている未来について聞いた。(全2回の2回目/最初から読む)
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「人はいつ死ぬかわからない」
――すぐに音楽の世界に戻りたくなりませんでしたか?
三浦謙司(以下、三浦) 当然、ピアノはすぐに弾きたくなりました。でも恋しいから戻る、というのは絶対に良くない。恋しさに価値はないと思っていました。自分が音楽をする理由がちゃんと見えない限りは再開しちゃいけないと思っていました。
――結局、ご自身で見つけた答えとは何でしたか?
三浦 人はいつ死ぬかわからないし、地位も名誉も財産も、いつまでも手にしていられるか保証もない。人生で何一つ保証されていない中で、絶対に誰にも奪われないものは、自分の音楽に対する思いや確信だけじゃないのか。それがありさえすれば、最終的にピアニストとしてお金を稼げようが稼げなかろうが、もう一度頑張る意味はあると思ったんです。
その答えに行き着くことができたのは、イギリスの大切な友人が亡くなったことがきっかけでした。あまりのショックで2週間ぐらい寝込みましたが、またベルリンに戻って、音楽を学び直すことにしたんです。
――退学した大学とはまた別の大学を再受験されたんですよね。「練習を1日しなければ、取り戻すのに3日かかる」なんてことも言われる世界で、1年ほどピアノを弾かない生活を送られていました。ブランクを埋めるのは大変だったのでは?
