このときつないだ手を離さず、6人から5人になった彼らが国民的アイドルに上りつめるまで、鈴木さんは彼らに寄り添い全ての感情を共有していきます。
ファンが見る5人の姿を作っているのが、5人だけではないこともよくわかりました。
脚本というとまるでタレントの自由を縛るものに聞こえます。私も『もう明日が待っている』を読むまで、タレントのリアルな姿を見せるために信頼関係で作られる脚本があることはよくわかっていませんでした。
「世の中は俺ら5人が仲が悪いと思ってるんだよな」
その最たるものが“グループ結成25周年”を記念した特別番組での5人旅企画でした。彼ら5人だけで大阪を旅する同番組は、今もSMAPファンの間で熱く切なく、語り継がれています。
5人に“素のまま”で旅してもらうため、鈴木さんたちは彼らの往く先々で密かに動きます。
たとえば、5人が立ち寄りそうなコンビニを推測して先回りし(当時5人は大手コンビニのCMに出演していました)、旅行雑誌を買い占めて“ある仕掛け”をしたと書かれています。
仕掛けとは、メンバーが行きたがっていたUSJの電話番号を、直接広報につながる番号に書き換えたこと。予想通りコンビニに寄った5人は「書き換えられたUSJの番号」を見て、鈴木さんの意図を察したのでしょう。
そして電話を受けたUSJも見事な対応でスムーズに5人を受け入れたのです。
また、旅行中に何を食べるかも悩みどころでした。リーダーはカップ麺、タクヤさんはカレー、シンゴさんはピザなど多くのCMに出演していた彼らは、テレビで食べられるものに制限があります。その中で、大阪らしい食べ物を楽しんでもらうとしたら何か。
ツヨシさんの「お好み焼きかな」という答えを鍵に、自然と5人がお好み焼きの店に向かえるよう、鈴木さんたちはさりげなくアシストしていったのです。