西武ホールディングス(HD)が外資系投資会社・ブラックストーンへ4000億円で売却した「東京ガーデンテラス紀尾井町」(以下、ガーデンテラス)。この取引にあたって、西武HDが通常行われる節税対策をとらず、数百億円もの法人税を払うことになっていたことが、ジャーナリスト・秋場大輔氏の取材でわかった。関係者によると法人税は「約700億円になる」という。

売却された東京ガーデンテラス紀尾井町 ©文藝春秋

ガーデンテラス売却に疑問の声

 西武HDがガーデンテラスをブラックストーンへ売却すると発表したのは2024年12月のこと。そして今年2月28日、ガーデンテラスの譲渡が完了した。

 だがこのガーデンテラス売却については、発表当初から疑問の声があがっていた。一つは旧赤坂プリンスホテル跡地に建設されたガーデンテラスは、西武HDのシンボル的存在だったからだ。さらにオフィスや飲食店、マンションなどから上がる賃料は年間約50億円にものぼり、何より、経営上も欠かせない存在だった。ガーデンテラスを所有していたのはHD子会社の西武リアルティソリューションズ(SRS、4月1日から西武不動産に社名変更)だったが、ガーデンテラスはSRSのオフィス賃貸収入の実に6割を占めていた。

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李王家ゆかりの赤坂プリンスクラシックハウス ©文藝春秋

節税対策を施した形跡がない

 さらに驚くべきことがある。西武HDが売却を発表した際に公表した「東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化にともなう資金使途について」という資料には、「流動化によるキャッシュイン約3200億円」とある。つまりキャッシュアウトが、譲渡価格4000億円から差し引いた約800億円程度だったことがわかる。金融関係者が解説する。

「仲介をしたみずほ証券には100億円くらいの手数料を払っているでしょうから、ざっと700億円ものカネを法人税として支払っていると思われます」

 一般に企業が大型不動産を売却する際には相応の不動産を購入して税負担を軽減する。だが2025年第3四半期決算を見る限り、そうした節税対策を施した形跡がないのだ。「普通の会社であれだけの税金を持って行かれたら、バカ者扱いされますよ」と大手企業の元CFOは呆れる。