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「SMAP解散後、放送作家としては死んでいた」謝罪放送から8年…鈴木おさむが「あの日の記憶」を描いた理由とは

すべての仕事はSMAPや飯島さんに認められたくて頑張ってたんですね。

2024/03/31
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 1996年にスタートした「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)の制作に20年以上携わってきた、放送作家の鈴木おさむさん。「新しい地図」の3人によるネット番組に出演した際に、稲垣吾郎さんが「同じメンバーみたいな感じだった」とふりかえるほどSMAPと長い時間を共に過ごし、深い信頼関係を築いてきた。

 そんな鈴木さんが上梓した新刊『もう明日が待っている』(文藝春秋)では、国民的アイドルグループの知られざる物語が描かれている。なぜこの小説を書こうと決意したのか――その背景にはSMAPという存在の大きさと、2016年1月18日の「謝罪放送」への罪の意識があったという。

 ここでは「週刊文春」2024年4月4日号より「阿川佐和子のこの人に会いたい」を特別公開。3月31日をもって放送作家を引退する鈴木さんが語った「覚悟の理由」とは……?

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◆◆◆

24時間で連載15本分の原稿を執筆

阿川 3月末まであと少しですが、仕事の整理はつきました?

鈴木 脚本があと2つ残ってるんですよ。最後の日まで仕事をしていると思いますね。

阿川 終わらなかったりして(笑)。今週のゲストの鈴木おさむさんは、この3月で放送作家を引退すると宣言なさって、最後に2冊、本を出される。週刊文春の連載をまとめたエッセイ『最後のテレビ論』と、SMAPを題材にした小説『もう明日が待っている』。エッセイはまだ連載中なんですよね。

鈴木 この対談が載る号で最終回です。ひどいですよ、文藝春秋社にカンヅメにされて。24時間で連載15本分の原稿を書きました。

阿川 えー!? 15本も!?

鈴木 書くことさえ決まっていれば、僕、速いんですよ。その様子をインスタライブで流したんですけどね。

阿川 カンヅメになってる状況を?

鈴木 そう。書いている様子を延々と。おでこに冷えピタなんか貼っちゃって(笑)。そうすれば嫌な原稿も書けるかなと思ったんです。

SMAPを題材にした小説『もう明日が待っている』(文藝春秋)

記憶をこじ開けて書きたくないことと向き合うのが大変だった

阿川 『電波少年』みたい(笑)。小説のほうは書き下ろしですか?

鈴木 いえ、この本のいちばん最後に収録された短編(「20160118」)が、2023年の月刊『文藝春秋』新年号に掲載されたものです。その後もう2編『文藝春秋』に書いて、それ以外は書き下ろしました。

阿川 さすが放送作家。書くことなんて朝めし前なのね。

鈴木 いや大変でしたよ。書くことよりも、記憶をこじ開けて書きたくないことと向き合い、伝えるべきことを見出していくという作業が。

阿川 まずはじゃあ、『もう明日が待っている』のほうから伺いましょうか。小説とはいえ、かなり鈴木さんの体験がベースになっていますね。放送作家として駆け出しだった鈴木さんがSMAPと出会い、密にメンバーとつきあいながら仕事に取り組んで、最後にはSMAPが解散してしまうという、一部始終が書かれている。SMAPの成長ぶりと鈴木さんの成長が重なってくるような物語。