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「川にヘンなものがあった。女が仰向けで…」遺体発見時の状況に隠された、殺人犯の“冷酷さ”<BOACスチュワーデス殺人事件>

「川にヘンなものがあった。女が仰向けで…」遺体発見時の状況に隠された、殺人犯の“冷酷さ”<BOACスチュワーデス殺人事件>

『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』より#2

2024/04/30

genre : ライフ, 読書, 社会

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 松本清張『黒い福音』のモデルとなり、三億円事件と並んで「昭和の2大未解決事件」とされた、BOACスチュワーデス殺人事件。

 1959年3月、東京・杉並区大宮町の善福寺川宮下橋下流50メートルで女性の水死体が発見され、重要参考人としてベルギー人神父の名前が上がっていたにも関わらず、解決に至らず迷宮入りしてしまった事件だ。

 ここでは、作家・大橋義輝氏がその神父の行方を追った『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』(共栄書房)より一部を抜粋して紹介する。被害者の女性・武川知子さん(当時27歳)の遺体が発見された現場や、発見者の証言から浮かび上がった「謎」とは――。(全3回の2回目/最初から読む

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◆◆◆

知子さん、遺体で見つかる

 私は20代の頃、知子さんの遺体発見現場を何回か訪れたことはあったが、あらためて訪ねたのは2013年春のことであった。

 この時、思わぬ発見をした。事件当時の新聞では、通勤で通りがかった人物の目撃で警察に通報となっていたが、それよりも早く、知子さんの遺体の存在に気付いていた人物に出会った。つまり第一発見者を見つけたのだ。毛塚正夫さんである。

 毛塚さん宅は500坪以上の広い敷地を有している。善福寺川に面しており、竹林が生い茂っていた。4代目という毛塚さんが言う。

「中学1年の頃だ。朝起きると竹やぶに入って裏の川にむかって小便をするんだ。あの朝もそうだった。ところがいつもと違い、川にヘンなものがあったんだ。女が仰向けで寝ていたんだよ」

©GYRO PHOTOGRAPHY/イメージマート

 午前7時少し前のこと。けっきょく、正夫さんは弟(和夫さん)に「川にヘンなものがあるぞ」と言っただけで気にもとめなかった。弟の和夫さんが言葉を繋ぐ。

「当時、松の木小学校の4年生だった。この朝は学校で当番だったから早く行かなくてはいけなかった。当番は教室にあるストーブに石炭を入れて火を起こす。時間は朝7時を少し過ぎた頃かな。川に見慣れぬものがあった。何だろうと近づくと、ぬいぐるみかマネキンのようなものが川に横たわっていた。

 そばに落ちていた石ころを拾って、投げつけたんだ。当たらなかったよ。でもここでぐずぐずしていると学校に遅れちゃうからね、そのまま学校へ行った。別に気にしていなかったので誰にも話さなかった。帰ってくると黒山の人だかりにびっくりしたことを覚えているよ」

 ここで知子さんの遺体発見の状況を、捜査報告書よりあらためて確認しておく。

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