事件化されたものだけで7人が死亡(殺人6件、傷害致死1件)した「北九州監禁連続殺人事件」における、北九州市内の関係先のいまを見て回る後編。

計7人が殺害され、死体を解体されたマンション

(8)片野マンション30×号室

 94年10月に、松永太(死刑囚)と彼との長男を抱えた緒方純子(受刑者)が移り住む。このマンションは監禁されていた少女・広田清美さん(仮名)の伯母の名義で借りている。伯母は清美さんの父親で松永らに殺害されてしまう広田由紀夫さん(仮名)から、松永を紹介されていた。

 この5階建てマンションでの生活は、02年3月に松永と緒方が逮捕されるまで続き、ここで計7人が殺害され、死体を解体された。松永らによる犯行の中心となった住居であるため、一連の経過及び現在の状況については後に記す。

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幼稚園勤務時代の緒方純子

新たな金づるを管理するため、片野第2マンションを契約

(9)片野第2マンション80×号室

(8)片野マンションで監禁し、“通電”による虐待を加えていた広田由紀夫さんに対し、松永は知り合いを紹介するように強要。95年8月に、由紀夫さんの高校時代の同級生である夫とその妻の原武裕子さん(仮名)を紹介させる。

 偽名を名乗り、京都大学を卒業して大手進学塾の講師をしていると虚偽の経歴を伝えていた松永は、裕子さんに手土産を持参しては、彼女の服装や容姿を褒めちぎる。やがて松永に気を許した裕子さんが夫の愚痴を口にするようになると、「我慢する必要はない。離婚すればいい」と言い、自分が好意を寄せているかのように装った。

 松永と裕子さんはデートを重ねるようになり、彼女は96年2月に夫と別居。3人の子供を伴って実家に身を寄せた。

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

 じつはこの時期、96年2月26日に松永と緒方は(8)片野マンション30×号室にて、広田由紀夫さんを虐待による衰弱死で殺害している。由紀夫さんの遺体は同マンション内にて、緒方と由紀夫さんの娘の清美さんによって解体され、遺棄されていた。

 何も知らない裕子さんは4月に夫との離婚届を提出。松永は離婚届を出した裕子さんに対して、「自分たちが結婚したら新居にしよう」と言い、5月にこの8階建て片野第2マンションの80×号室を彼女の名義で契約させる。だが松永は「広島に実家があるから。実家に近い新幹線の駅を探そう。子供3人を引き取って面倒をみるから」と虚言を申し向け、6月末には裕子さんに同部屋を解約させている。

 現在もこの片野第2マンションは存在し、新たな住人が住んでいる。その2年前に借りた片野マンションから歩いて移動できる距離にあることから、裕子さんが“金づる”となっている間の管理がしやすいことを前提にしたものだと思われる。