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辛いことも苦しいことも、大切なことは神宮球場が教えてくれた

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/27
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昨年の七夕、苦しくてたまらない試合

 ですが、球場に行って応援していても嬉しいことだけが起こるわけじゃありません。今までとは違う気持ちを知れた試合もありました。昨年の七夕、私は外野席で応援していました。苦しい試合が続く中、この日は8回が終わるまでで5点のリードがあり、9回抑えで登板したのはそれまで先発を担っていた小川泰弘投手。「5点あるし、初の抑えだろうけど、きっと大丈夫」って思ってました。いや、私だけじゃなかったと思います。球場にいたほとんどのファンはこの日の勝利をほぼ確信していたと思います。その後点を取られてしまうんですが、1点2点取られている間はまだ気持ちは変わっていませんでした。しかしスコアボードの数字がどんどん変わっていき、8対5あたりくらいから「ま、まだ3点あるし」と余裕は無くなり……8対6。「まだ大丈夫、最悪同点までならなんとかなるかもだし。頑張れ!! もう小川投手に頼るしかない、踏ん張ってもらうしかない。もうどんな試合展開になっても支えるから!」。小川投手と心中を決めたような気持ちでした。

 ヤクルトの応援席は本当に物凄い雰囲気で、静かだったけど「なんとか抑えてくれ!」と、みんなの気持ちはひとつだったと思います。私は、支えるから! ってかっこいいこと思っていても、まだ2点差つけて勝っているのに、なぜか泣きたいくらいの心境で。それでも、「ここで私が泣いて応援から逃げてどうするんだ、一緒に闘わなくちゃ」と折れそうになる心と必死に闘いながら投球を見守りました。時間も長く感じました。……しかしそこから3ランを打たれ、結果8対9で逆転負け。呆然とグラウンドをみるしかなくて、忘れることの出来ない苦しくてたまらない試合。でもこの時思ったんです。今日神宮に来られてよかったって。あの時の小川投手は私よりも、もっと計り知れないくらい苦しくて辛かったと思うけど、同じ時を同じ場所でこの苦しさや辛さを共有できてよかった。球場にいたからこそ、この球場の空気を感じることができた。苦しんでいる小川投手に生で声援を送ることができた。テレビの前にいたら応援届けたくて居ても立っても居られなかったと思います。共に闘うことができてよかったです。でも、出来ることならもっともっともっと、力になりたかったです。

全てが私の財産で、宝物です

 神宮球場はたくさんのことを感じさせてくれます。辛いことも苦しいことも嬉しいことも、寂しくなることも。でもどれも全て私が感じたいことなんです。東京ヤクルトスワローズというチームが好きだから。何が私をこんなに夢中にさせているのかうまく説明出来ないけど、でも、一番ときめくんです。スワローズの選手の笑顔が見たいんです。球場に行くから感じられたこと全てが私の財産で、宝物です。

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 そうそう、七夕の日、ひとつだけ嬉しかったことがありました。それは9回裏。サヨナラを信じて応援していたんですが、生放送のお仕事があり最後まで球場にいられなかったんです。時間ギリギリまで応援して泣く泣く球場から出ようとした時、私にヤジが飛んできたんです。「まだ終わってねーだろうが」って。「諦めて帰ってるんじゃない(涙)」って思ったけど、同時に、負けてる試合で「球場に行かない方がいいよ」って声をかけられたことを思い出しました。辛くても諦めないファンが今はこんなにいる。頼もしかったし、嬉しかったです。

 もしまた負けてる試合で「球場に行かないほうがいいよ」って声をかけられたら。次は「まだ試合は終わっていません、一緒に闘ってきます!」ってこたえたいです。

 

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