昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「#限界コスメ」「人類モテ」……コスメ事情から見えてくる、オタク女の変化とは

『浪費図鑑』(劇団雌猫)

『浪費図鑑』でホストやアイドルグループなどの“沼”にハマった女性たちによる浪費の実態をあきらかにした「劇団雌猫」。メンバーのひらりさによると、いま、オタク女子たちは「モテ」を目的としないコスメ道を邁進しているのだという。

「オタクは恥ずかしいから隠すもの」ではなくなった

 ジャニーズ、2.5次元舞台、声優、宝塚、ホストクラブ、女子アイドル、ディズニー、マンガ、ボーイズラブ……。

「オタク」という言葉が人口に膾炙し、そのジャンルも多種多様になってきた現代。矢野経済研究所の調査(2017年)によれば、その市場規模は5700億円にも達すると言います。『電車男』(2004年、新潮社)に代表される「内気でダサいオタク」のイメージはずいぶん後退し、今では街なかを颯爽と歩くきれいめキャリアウーマンが、シンプルなブランドバッグにさりげなく、推しているアイドルのキーホルダーをつけている……なんて光景も珍しくなくなりました。「オタクは恥ずかしいから隠すもの」という人が多かった時代から「オタクはむしろアピールして同好の友達増やしたほうが楽しいじゃん」というマインドへと変わってきたのです。

2017年8月に開催された「浪費女の夏~本当にあった怖い話」 ©文藝春秋

 私が所属する集団「劇団雌猫」も、4人全員が、インターネットで知り合った平成元年生まれのオタク女。それぞれのメインジャンルを持ちながらも、推しやジャンルの違う友人との交流も怠らず、複数の「沼」を掛け持ちし、さらなる新しい沼を求めて日々貪欲に活動しています。そのウォッチングの結果、オタク女たちによる匿名エッセイ集『浪費図鑑』(小学館)を刊行することができ、おかげさまで累計5万部を突破しています。

 さて、オタク女たちの「浪費」に着目し、たくさんのオタク女たちに出会ってきて、実感したことがあります。それは、自分の「推し」に時間もお金もつぎこんでいるオタク女たちが、その一方で自分への投資も怠っていないことです。つまり……、化粧や服装にも手を抜かず、「擬態」に精を出している人が、非常に目立ってきたのです。

オタク女子の間で流行した「#限界コスメ」とは

 2018年の始めには、オタク女子の間で「#限界コスメ」なるハッシュタグが流行する事態も発生しました。

限界コスメ”とは、「趣味に極力お金をつぎこみたいからこそ、それ以外には限界までお金をかけたくないオタクにおすすめしたい有能コスメ」の意。我こそはオタク女だ、という人たちが(自分の推しジャンルの宣伝も混ぜ込みつつ)思い思いのおすすめコスメをツイートし、ちょっとした「祭り」が繰り広げられました。

 私は、このムーブメントを、非常に画期的な出来事だと思いました。というのも――私自身もオタクなので実感してきたのですが――とくに二次元オタクの間には、

「自分が着飾っても仕方がない」
「人の目を気にするのは格好悪い」
「オタクなのに何モテようとしちゃってんの」

 こういった同調圧力が少なからずあり、容姿に気を使うことはオタクとして中途半端、というような風潮があったからです。