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拉致問題「なぜ日本は直接言ってこないのか」金正恩衝撃発言までの内幕

日本・北朝鮮ルートはすでに切れてしまったのか? 

2018/05/12

 北朝鮮をめぐる国際情勢が急転している。韓国と北朝鮮の両首脳による南北首脳会談に続き、史上初となる米朝首脳会談の日程と場所も決定した。それに先立ち、北朝鮮に拘束されていた米国人3人が解放され、日本人の拉致問題の解決にも大きな期待が寄せられている。関連する発言を振り返ってみよう。

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金正恩 北朝鮮・朝鮮労働党委員長
「韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は、直接言ってこないのか」

FNN 5月10日

 今週、大きな話題を呼んだのが、金委員長によるこの発言だ。4月27日の南北首脳会談で、韓国の文在寅大統領から、日本が拉致問題の解決を求めていることを伝えると、金委員長はこのように言い放ったという。政府関係者へのFNNの取材で明らかになった。拉致問題に関する金委員長の発言が明らかになるのは、これが初めてのこと。

9日、北朝鮮の朝鮮労働党本部庁舎で米国のポンペオ国務長官と握手する金正恩労働党委員長 ©朝鮮通信=時事

 ネットでは「今まで日本政府は北朝鮮に直接伝えてなかったのか?」「安倍政権は拉致問題を解決する気がないのではないか?」という声が相次いだ。玉木雄一郎国民民主党共同代表の「もし真実なら、我が国政府は何をしてるんだということになる」という声はその代表的なものだろう(ツイッターより 5月10日)。

 しかし、これまで日本政府が北朝鮮に拉致被害者帰国を直接要求したことがないのかというと、そんなわけはない。日本報道検証機構代表の揚井人文氏が自らの記事「拉致問題『なぜ日本は直接言ってこないのか』金正恩氏発言は事実か?」(Yahoo!個人 5月11日)で、2015年8月の日朝外相会談や2016年6月の北東アジア協力対話などで日本政府が拉致被害者の帰国を北朝鮮に直接求めてきた経緯をまとめている。そもそも卑劣な拉致を行っているのは北朝鮮なわけで、その親玉にえらそうな口をきかれるいわれもない。

 一方、『週刊文春』(5月17日号)は、北朝鮮との外交交渉において「日本は後手後手の対応だ」という首相官邸関係者の声を紹介している。北朝鮮との米韓の交渉の動きを日本政府はまったく掴んでいないというのだ。それが本当なら、玉木氏が先述のツイートで指摘した「そもそも、今、日朝間に、拉致問題解決に向けた交渉ルートは存在しているのか」という疑問が湧く。

 朝鮮半島情勢についての著書もある東京新聞論説委員の五味洋治氏は「かつて機能していた北朝鮮側とのパイプはほぼ切れてしまったようです」「(北朝鮮がミサイルを発射するたびに行われていた抗議は)実際は(在中国)北朝鮮大使館にファクスを送っているだけなんです」と語っていたが(日刊ゲンダイDIGITAL 4月9日)、実際はどうなのだろうか? 

安倍晋三 首相
「まずは南北、そして米朝首脳会談の際に拉致問題が前進するよう、私が司令塔となって、全力で取り組んでまいります」

首相官邸ホームページ 4月22日

 4月22日、安倍首相は都内で拉致被害者家族との懇談を行っている。上記の言葉はそのときの挨拶で述べたもの。内容は主に4月17日から2日間にわたって行われた日米首脳会談で、トランプ米大統領に拉致問題について伝えたというものだった。

「北朝鮮の問題について日本の主張、立場をしっかりとトランプ大統領にお伝えしました」「是非この千載一遇の機会を捉えて、この拉致問題について議題に乗せ、解決を強く迫ってもらいたい」「大統領は正にその時とき(官邸ホームページママ)、身を乗り出して私の目を見ながら、安倍さん、しっかりと皆様の気持ちを私は受け止めている、という話をしてくれました」などなど。また、韓国の文在寅大統領、中国の王毅国務委員にも拉致問題の重要性をしっかり伝えたという。

拉致被害者家族と懇談した安倍首相。家族会会長の飯塚繁雄さん(中央)、横田めぐみさんの母親、早紀江さん(左)

 拉致問題について、とにかく米韓中の首脳に言伝をしていることははっきり伝わってくる。たしかに金委員長の言うとおり、ここ最近は「周りばかりが言ってきている」状態になっているようだ。安倍首相はこのとき、北朝鮮が対話路線に切り替えてきたのは「北朝鮮に対して最大限の圧力をかけてきた成果」と語っていたが、これまでの「圧力一辺倒」の方針によって北朝鮮との交渉ルートがなくなってしまったのではないだろうか?

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