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復帰して絶好調 広島・丸佳浩に学んだ「いい意味でリセットして」という言葉

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/26
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「じらし」を経てついに戻ってきた丸選手

 5月末に戻ってきて、すぐにスタメンに入ることはなかったが、その「じらし」を経て、ついに丸選手が戻ってみたら、いやはや、なんとも、言葉にするのが逆に難しいが、とにもかくにも素晴らしかった。

 丸選手自身は早期復帰に向けてたいへんな苦労や尽力があっただろう。だが、私たちファンは気楽なもので、丸選手がいなかった1カ月のことさえ忘れてしまいそうだ。

 ブンとしなやかに。リラックスムード満点にバットを振ってバッターボックスに入り。私は不勉強でなにをしているのかよくわからないのだが、バットの真ん中あたり、そしてグリップの上あたりをチョイチョイと目分量で測定するような儀式を経て。振らないときは振らない! 驚異的な選球眼で涼風を運び。振るときは振る!  目にも止まらぬ驚異的な打法で熱風を起こす。

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 それでいてしなやかで、やわらかく、おだやかで、明るい。ダイヤモンドを一周してベンチに戻れば。一周しなくても。アウトになってもベンチに戻れば。ノートを開いて勉強を開始する! 二宮金治郎どころの騒ぎじゃない! 私は週刊誌の編集者時代に二宮金治郎氏生誕の地、神奈川県小田原の近くを二宮金治郎氏の格好をして訪ねたことがあるが。ちょんまげのかつらをつけて背中にマキを背負い、本を読みながら。

丸選手に学んだ「いい意味でリセットして」

 あれから30年。丸選手の勤勉な姿勢は全国に銅像ができてもいいくらいの素晴らしいものだと私は思う。冗談だと思わないでいただきたい。丸選手の軽やかだけどもやることは必ずやる的な凄味。ソフトな凄味。軽快な凄味。そしてそれが連続する奇跡を私たちはいま、目にしている。そしてその奇跡が、3連覇に繋がっていくと信じている。

 かつて。今は亡き三村敏彦氏が監督時代に言った。

「奇跡は起こすためにある」

 その奇跡は一朝一夕に起きるものではない。偶然、もののはずみで実現することでもない。もくもくとパンプアップして。もくもくと勉強して。誰がなんと言おうと耐えて耐えてやりぬいた先に奇跡は起きるのである。

 数日前。連日の本塁打でお立ち台にあがった丸選手は翌日のこころがまえをこう語った。

「いい意味でリセットして」

 私のノートに記されている。

「いい意味でリセットして」

 自動車を運転中、ラジオでヒーローインタビューを聞いたのだ。赤信号で停車したとき、ノートを開いてそれを記した。助手席にはいつもノートが置いてあるのだ。丸選手は私よりかなり歳は下だが、ものを学ぶのに年齢の上下は関係ない。いい意味でリセットしていこう。簡単なことではないと思いますが。

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