官公庁がホームページで公開した極秘文書の黒塗り部分が、実は容易に読み取れてしまうことが発覚し、あわてて差し替えたものの、その前の文書がネット経由で拡散してしまうのはよくある話。最近では、財務省が5月23日に公開した「森友学園」の交渉過程を記録した文書がまさにこの状態で、大騒ぎになったのは記憶に新しいところです。
こうしたミスは、間違ったソフトやツールを使うなど単純な知識不足で起こるパターンもあれば、正しいツールを使っていながらチェックを怠って不完全な処理のまま公開されてしまうパターンもあります。今回の「森友学園」交渉記録文書を例に、典型的なミスの例と、今回実際に起こった例とを見ていきましょう。
ミスのほとんどは注釈ツール「長方形」の誤用
「黒塗りが外せる!」と大騒ぎになる時は、本来使うべきツールではなく、無料で入手可能なPDF閲覧ソフト「Acrobat Reader」の注釈ツールに含まれる「長方形ツール」を誤って使っているパターンがほとんどです。
この「長方形ツール」は、もともと文書の一部分を四角く囲って強調するためのツールですが、枠および内側の色を黒に指定すれば、墨ベタのような外観になります。これを隠したい箇所に貼り付けていけば、下の文字が読めなくなるというわけです。
しかしこの方法は、いわば紙に付箋を貼り付けているようなものですので、「Acrobat Reader」上でマウスを使ってドラッグすれば簡単に外せてしまいます。しかもこの方法では、長方形ツールひとつひとつに書き込んだユーザの名前および日時が記録されますので、作業の過程が一目瞭然になってしまいます。言うなればもっともレベルが低く、かつ名前まで公開されてしまうという、二重に恥ずかしいミスということになります。
これと似たパターンとしては、黒く塗りつぶした画像ファイルを用意し、「Acrobat」などPDF編集ソフトで読み込んで貼り付けていくという、やや手の込んだ方法もあります。こちらはPDFそのものを編集していることもあり、「Acrobat Reader」のような閲覧ソフト上で外すことは不可能ですが、重なった下のデータは残ったままで、PDF編集ソフトを使えば見えてしまいますので、あまり意味がありません。