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レスリング栄和人氏の謝罪会見は、なぜ反省が感じられなかったのか

臨床心理士が分析する

2018/06/18
谷岡郁子学長 ©共同通信社

 あの谷岡郁子学長にも、とうとう匙を投げられたようだ。レスリング女子の伊調馨選手らへパワハラで謝罪会見した途端、「誠意がない」、「反省が感じられない」と批判が集中していた前日本レスリング協会強化本部長の栄和人氏――。

 至学館大学の監督として現場復帰してわずか数日、当初、「パワハラはない」と会見で言及していた日本レスリング協会副会長で至学館大学の谷岡学長から、あっという間に監督解任を告げられた。

自己認識の甘さと自己保身が印象に残った

 レスリング明治杯全日本選抜選手権の会場である都内の駒澤体育館で、6月14日、大会1日目の朝というタイミングで行われたこの会見。急に設定されたこともあり、会見には明治杯の取材申請をしていたメディアしか、取材を許可されなかったという。加えてこの会見は、なぜか生放送が禁止された。だがダメだと言われればやりたくなる、禁止されれば見たくなるのが人間だ。このような心理現象を「心理的リアクタンス」といい、アメリカでは「カリギュラ効果」と呼ばれている。何があるのかと興味が湧くが、コントロールできる形で会見を終わらせたいという栄氏側の自己保身を強く感じさせた。

 騒動以来、ようやく公の場に姿を現した栄氏だが、謝罪する気持ちより、自己認識の甘さと自己保身が強く印象に残った。その理由は、この会見に矛盾を感じる点がいくつもあったことだと思う。

謝罪会見を行った栄和人氏 ©時事通信社

「視線を上げない」ことから分かるマイナス感情

 まずは謝罪の姿勢についてだ。会見冒頭「伊調選手、田南部(力)コーチに深くお詫びしたい」と述べたが、ほとんど顔を上げることなく、声も小さく、身体は右へ左へと大きく揺れる。そのため腹を決めて謝罪に出てきたという印象が薄くなる。案の定、頭の下げ方も実にあっさりしたものだ。

 間違いがあってはいけないと栄氏は謝罪文を読み始めた。次々と謝罪相手を読み上げながら視線を上げたのだが、最初に名前を呼んだ伊調選手と田南部コーチの時は、視線を上げることがなかったのだ。その仕草から読み取れるのは、二人に対するマイナス感情である。パワハラ認定について「深く反省している」と述べながら、軽く会釈したような中途半端な態度では、深く反省と言葉で言うほどには、身体の動きは反省を示していない。

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