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大学教授の立場から伝えたい、「結果」が出ない時の「転身」のススメ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/17
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追い込まれた大学院生に勧めること

「あんなに上手くいっていた筈の『彼』は、どこで躓いてしまったのか」。悩み苦しむ「彼」を、指導教員は勿論、周囲もそんな気持ちで見守っている。ましてやそれが、努力家で誰にでも慕われ、ある段階まで「結果」を出して来れた人なら猶更である。しかしながら、一旦、「結果」面でも精神面でも追い込まれた「彼」を立ち直らせるのは、周囲の誰にとっても簡単な事ではない。成功していた頃のやり方を思い出すのも難しくなった人に、かつての自信を取り戻させるのは簡単な事ではないからである。

 だからこそそんな時、彼らに勧める一つの方法は、「思い切って場所を変えてみる」事である。それは留学であってもいいし、また、研究員等として他の大学に籍を移すのでも良い。そして実際、自分の教え子の中にも、新たな指導者や環境を得て、飛躍した人達は少なくない。「先生の所にいた時は大変でしたよ」。今では立派になった彼らが笑いながらそういう時、かつての指導者はこう頭を下げる。「ごめんね、僕の指導が上手くいかなくて」。人生には「詫びながら飲む酒」が苦くも旨い瞬間もあるのだ、と知るのはこんな時である。

 だからこそ「転身」は決して人生の敗北ではなく、新たなチャンスと成功へのスタートである。頑張れ伊藤光。京セラドームで誰よりも人気があり、誰よりも女性ファンの多かった君が、2014年に流した涙をオリックスファンは忘れない。来年のDeNAとの交流戦、いや今年の日本シリーズで背番号を29に変えた君と会えるのを楽しみにしている。京セラドームのファンたちは、レギュラーを獲得した君を、スタンディングオベーションで迎える筈だ。そして後は、オリックスとの対戦でだけ、「少しだけ不調」になってくれればいいだけなのだから。

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DeNAにトレードで移籍した伊藤光 ©文藝春秋

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