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涙のリクエスト制度ーーオリックス戦誤審の本当の問題とは

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/30
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 よく場外ステージでライブをやっていた時、色々な方から曲のリクエストを頂戴していた。あの曲が聴きたい、この曲が聴きたい。それが我々MEGASTOPPERの曲なら応えてあげたい。球場でよく聴く曲を生で聴きたいという要望には、可能な限り歌って応えていた。しかし、応えようのないリクエスト、言わば「不完全なリクエスト」にもちょいちょい直面したものだ。対ホークス戦で「We Love Marines」を歌ってくれとか「地平を駆ける獅子を見た」を歌ってくれとか。「燃えよドラゴンズ」のリクエストなどは笑って無視していた、いや、普通にそれが当たり前だろう。

 さてさて本題に、野球の話に入ろうか。去る6月22日のBs対ホークスの件の大誤審。ある程度時間が経過したにも関わらず今だに一部ファンの間では頻繁に話題に登る問題だ。詳しい内容は報道でも仕切りに検証されているので、このコラムで追唱するのは止めておこう。また、それはそれと割り切って次の戦いへと歩を進めるチームやBsファンの感情を逆撫でするつもりも無い。ここでは何故このような事態に陥ったか、また本当に問題の起因は誤審だけなのか、今シーズンから導入されたリクエスト制度について少し考えて見ようと思う。誤審の被害者と位置付けられているBsのファンだからこそ言える事を交えながら。

22日のソフトバンク戦、中村晃の右翼ポール際への打球の判定を巡り集まる審判団 ©共同通信社

人気球団優位のルールになり兼ねない

 今回の問題で、大方のイメージは「加害者=審判団」、「被害者=Bs」であるだろう。しかし本当にそれだけなのだろうか? 自分が一概にそう言い切れないのは主催者側、つまりホームチームがBsであった事に尽きると思う。それは何故か?ズバリ、試合中継の少なさである。そう、とある全国アンケートでは上から11番目の人気球団なのだから、キー局・地方局・BS・CS含め多くのTV曲が中継しているとは言い難い状況だ。そういう意味では、少ない材料で重要な判断を求められた審判団もまた、少なからず被害者寄りのような気もするのだ。加害者は言ってみればNPBではないのだろうか。

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 と言うのも、NPBに於ける「リクエスト」はMLBの「チャレンジ」とは似て非なる物である。一番大きな差は何か、それは解析用の映像の絶対数だろう。MLBでは「解析専用のビデオカメラ」を複数台ホーム球場に設置し、専用の解析スタッフが様々な映像を元に検証を行う。他方、NPBはと言うと「TV中継用」の映像を現場の審判が現場で検証するのである。言わば、最終的にジャッジを下すべき審判が、他者の証拠を拝借して決断を下すのだ。ではもし、その数少ないTV中継用の映像に当初の判定を覆すだけの内容が写っていなかったら? その場合は材料の不足により当初の判定が採用される事となっている。今回はそれでも判定を覆す判断をしたのだから一方的に審判団が責められているのだが、しかし「不足した検証材料」から「5分以内に」結論を求められるのも酷と言えば酷な話だろう。ひょっとしてこれがジャイアンツやタイガースの主催試合なら、違った判断材料が存在したのかもしれない。が、そんな馬鹿な話は無いだろう、球団の人気、不人気が勝敗を左右して良いはずが無い。

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