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若い女性と不倫すると、早死にの確率が増す

 孤独な生活は、認知症になるリスクを高めてしまうこともわかっています。独身男性の寿命が短い理由も、パートナーがいないと食生活をはじめとする生活サイクルが不摂生になりやすいということよりも、もともと男性の方が女性よりもコミュニケーションが苦手であり、年を取ってから新しい関係を築くことが不得手だということが、大きな要因だと推測されています。

 一方、女性は夫がいなくても家庭の外に人間関係をつくることが得意なため、深刻なダメージを受けにくいようです。

 女性は夫との死別、離別から受ける影響が軽度とはいえ有配偶のほうが平均余命は長く、未婚と有配偶の平均余命の長さは約8歳ですから、やはり結婚生活をつづけたほうが長生きするには得なようです。

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 じつは、不倫している男性は早死にする傾向にあります。その原因についての研究者たちの見解は、「複数の異性を同時に愛するのは肉体的、精神的な負荷が大きいためではないか」というものです。とくに若い女性と不倫すると、早死にの確率が増すようです。

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 一方、不倫している女性の寿命が短くなるという研究は見当たりませんが、秘密の関係を続ける負荷は、もちろん女性側にもあるでしょう。不倫は妬みの対象になりますが、実際には板挟みになったり、周囲にバレないように振る舞わなければならないなど、心理的な負荷は大きいでしょう。もっとも、そうした困難とスリルを乗り越えて得られる快楽だからこそ、不倫にハマる人が多いのかもしれませんが。

 このように見てみると、不倫は必ずしも合理的な行動とは言えません。純粋に生物としての損得を見た場合、本人の生存確率が上がるか、子孫を増やす確率が上がらなければ、合理的な行動とはみなせないからです。

 農耕が始まる前の人類にとっては、乱婚のほうが効率よく子孫を残せたかもしれません。しかし一夫一婦制が根づいたように見える現代日本社会では、不倫する男性は寿命を縮め、男女問わず不倫相手とは子どもをもうけることが困難です。日本で婚外子は全体の2.3%しかおらず、国際的に見ても韓国(1.9%)に次いで最も低い部類に入ります。また、中絶率もきわめて高いのです。

 現代社会では賢い選択とは言えないのに、不倫に走る人がこんなにも多いのは、やはり私たちの遺伝子と脳の仕組みが一夫一婦制向きにはできていないことの何よりの証拠ではないでしょうか。

出典:『不倫』第5章「不倫をやめられないあなたへ」より抜粋

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中野 信子(著)

文藝春秋
2018年7月20日 発売

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