文春オンライン

芥川賞作家・津村記久子「なんで『西部警察』はよくて『うる星やつら』はダメやったんやろう」

テレビっ子作家・津村記久子インタビュー #1

note

「ダウンタウン」より「雨上がり決死隊」世代

―― お笑いはどうですか?

津村 中1ぐらいからめっちゃ観てました。毎日一緒に帰ってる友達のお姉ちゃんがサブカルの人やって。その影響で『コックと泥棒、その妻と愛人』みたいな映画のことを知ったり、古田新太さん、牧野エミさん、桂小枝さんでやってた『怒涛のくるくるシアター』(バラエティ番組)とか観てましたね。テンション(田口浩正と小浦一優によるお笑いコンビ)とかも出てたんですよ。だから、今でも田口浩正さんとか見たら、「あっ、テンションの人や」って思うわけです。

 あとは「吉本印天然素材」の前の段階で、雨上がり決死隊とバッファロー吾郎とFUJIWARAとかが組んでた「しねしね団」というコントグループもその番組で観てましたね。その時のビデオを繰り返し見過ぎて「天然素材」の頃にはあまり執着がなくなってました。なんか嫌な子ですね(笑)。

ADVERTISEMENT

―― お笑いライブは行っていたんですか。

津村 中学の時は行ってました。(心斎橋筋)2丁目劇場に友達に連れられて。でも、みんな出待ちをしたがるんですよね。私、出待ち嫌いなんですよ、外でひたすら待ってるのとかすぐ退屈してたから(笑)。ライブだけ楽しんで帰ったらいいのにっていうのが通用しなかったので、徐々に足が遠のきましたね。

―― 世代的にはダウンタウン全盛の頃でしょうか?

津村 さすがに『4時ですよ~だ』は観てました。でも、ダウンタウンが直撃した世代ってちょっと上、ちょっとだけずれるんですよ。私たちは雨上がり決死隊ぐらいからなんですよね。

―― 中学3年の頃、バルセロナ五輪からオリンピックを見始めたそうですね。

津村 『コビーの冒険』ね(笑)。バルセロナ五輪のマスコットキャラクターのアニメ。塾に行く前に、コビーを毎日10分観てたんですよね。

―― テレビでオリンピックを観るのはどんな感じでしたか。

津村 みんなが結果を私と同時に知るっていうのが不思議でした。めっちゃ当たり前の話なんですけど。一番印象に残ってるのが男子マラソン。森下広一さんが2位やったんですけど、生放送やと結果が全員同時にわかるっていうことをそれまで意識したことがなかったので、その感じがおもしろかったですね。

 あと、オリンピックでは開会式が今でも好きですね。名前を知らんかった国の選手が1人だけで出てきたり、スタッフがめっちゃ手振ってる。アメリカとかロシアの大選手団に挟まれて、小さな国の人たちが、ニコニコしながら出てくるのがすごい好きでそこばっかり観てます(笑)。

つむら・きくこ/1978年大阪府生まれ。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞を受賞。最新作にサッカー2部リーグのサポーターたちの群像を描いた『ディス・イズ・ザ・デイ』。​

写真=深野未季/文藝春秋

芥川賞作家・津村記久子「なんで『西部警察』はよくて『うる星やつら』はダメやったんやろう」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー