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「猛暑もチャンス」から突然の「サマータイム導入」 森喜朗の五輪トンデモ発言まとめ

安倍首相も「国民の評価が高い」と援護射撃

2018/08/11

 8月6日、驚きのニュースが報じられた。「酷暑対策でサマータイム導入へ 秋の臨時国会で議員立法 31、32年限定」(産経ニュース)というものだ。酷暑が懸念される東京五輪対策として、夏の時間を2時間繰り上げる、サマータイム(夏時間)を導入しようというのだ。突然の報道に日本じゅうがパニックに陥っている。関連する発言を集めてみた。

2014年の東京マラソンでの森喜朗氏 ©文藝春秋

森喜朗 東京五輪・パラリンピック組織委員会会長
「政府にやってほしいと思う対策がサマータイム」

毎日新聞web版 7月27日

安倍晋三 首相
「それが1つの解決策かもしれない」

産経ニュース 7月27日

 政府・与党は東京五輪・パラリンピックの酷暑対策として、サマータイム導入に向けて本格検討に入ったという。最も暑い6~8月を軸に数ヶ月だけ2時間繰り上げる。秋の臨時国会で議員立法提出を目指しており、2019年、2022年の2年間限定導入になるそうだ。

森喜朗氏 ©文藝春秋

 発案者は東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相だ。7月27日、首相官邸を訪れた森氏は安倍晋三首相にサマータイム導入を要請。官邸訪問後、森氏は安倍首相が「それが1つの解決策かもしれない」と応じたと記者団の前で話した。

 森氏といえば、「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。ある意味、五輪関係者にとってはチャンス」(日刊スポーツ 7月24日)という発言で物議を醸したが、まさかサマータイム導入案を隠し持っていたとは思わなかった。

「導入すれば、午前7時スタート予定のマラソンが、もっとも涼しい午前5時スタートとなり、日が高くなる前にレースを終えることができる」と産経ニュースは書いているが、それならサマータイムなど導入しなくてもマラソン競技を午前5時にスタートすればいいのではないだろうか? ちなみに「夕方に開始予定の競技はより暑い時間帯から始まるなど、新たな課題は出ることになる」という(朝日新聞デジタル 7月27日)。ダメじゃん。

「改修が間に合わない」IT関係者からは悲鳴が

 サマータイム導入に対してはIT関係者から強い反発の声が上がっている。日本のITシステムは基本的にサマータイムを前提として設計しておらず、システムの大規模な改修が必要となる。「改修が間に合わない」「システム障害が頻発する可能性がある」「恒久的に行うなら検討の価値はあるが、わずか2年間のためならコストがかかりすぎる」といった意見が多く出ている(ITmedia NEWS 8月6日)。

©iStock

サマータイムには経済効果もあるが……

 一方、サマータイムは経済効果があるとも言われている。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、サマータイム導入で個人消費が押し上げられ、年間7000億円の経済効果があると試算している(産経ニュース 8月6日)。

 しかし、永浜氏は8月8日に「不確実性の高いサマータイム効果」と題した記事を発表(『Economic Trends マクロ経済分析レポート』第一生命経済研究所)。経済効果は認めつつも、「中小企業等で労働時間の延長につながる」「人体の体内時計が狂うことで睡眠不足になり、労働者の生産性が低下する」「時計の針を動かすことに伴う余分な導入コスト負担の増加や、システムを中心とした混乱といった大きなリスクが伴う」などと指摘。「競技時間の変更等で対応するほうが国民の理解を得やすい」と結論づけている。

 サマータイムによる健康被害については、一般社団法人日本睡眠学会「サマータイム制度に関する特別委員会」が「欧米に比べて国民の短睡眠化・夜型化が進行している日本ではサマータイム制度導入による健康への影響が大きい」としている(『サマータイム-健康に与える影響-』2012年3月)。

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