昨年12月、北朝鮮の核ミサイル開発の脅威などを理由に導入を決めた陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。導入費用が当初の見積もりより大幅に跳ね上がったことが発表された。関連する発言を紹介する。

ルーマニアに配備されたイージス・アショア施設 ©時事通信社

費用に関して発言が二転三転

小野寺五典 防衛相
「わが国の弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上する。ただ費用は確定したものではなく、あらゆる段階で価格の精査に努めていきたい」

NHK NEWS WEB 7月30日

 小野寺五典防衛相は7月30日、陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入費用が1基あたり約1340億円になるという見通しを公表した。当初、防衛省が見積もりの金額として発表していたのは1基約800億円。実に約7割増しとなる。

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小野寺五典防衛相 ©JMPA

 政府はイージス・アショアを山口県萩市と秋田県秋田市に2基配備する予定だ。取得経費は2基で2680億円……と思ったら大間違い。前出の額は土地の造成や建屋、ミサイル発射装置などの費用を含まずに算出されており、総額はさらに膨らむ。30年間の維持・運用の経費を含めると約4664億円になるという概算も示されている(日本経済新聞 7月30日)。一方、西日本豪雨への財政措置は4200億円である(朝日新聞デジタル 7月10日)。

 小野寺防衛相は記者団に対し、「わが国の弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上する」と胸を張ったが、価格の高騰については「あらゆる段階で価格の精査に努めていきたい」と語っている。なお、小野寺氏は「精査」という言葉が好きらしく、イラク日報問題の際にも「文書に欠損はないかの精査を重ねていた」と語っていた(朝日新聞デジタル 4月3日)。イージス・アショアの価格は本当に精査されるのだろうか? 立憲民主党の枝野幸男代表は「費用に見合う効果があるのか、ゼロベースで見直すのは当然だ」と述べている(共同通信 7月31日)。

小野寺五典 防衛相
「どのくらいの見積もりになるか言ったことは一度もない」

日本経済新聞 7月24日

 小野寺防衛相は7月24日の記者会見で、イージス・アショアの導入費用について「どのくらいの見積もりかは一度も言ったことはない」と言い放った。見事なちゃぶ台返しだ。

国会議事堂 ©JMCA

 小野寺氏は昨年11月の国会で「一般的な見積もり」と断った上で「一つだいたい800億」と説明していた。防衛省はその後、施設整備費を含めて1000億円弱と見積もり額を変更している(朝日新聞デジタル 12月12日)。小野寺氏は「(従来の説明は)イージス艦に搭載しているシステムの調達費を参考として話した。今回のイージス・アショアが、どのくらいの見積もりか一度も言ったことはない」と釈明したが(東京新聞 7月25日)、これほど高額なものを導入するのに、そんなあやふやな見積もりをもとにして国会で議論していたのだろうか?

 なお、小野寺氏は西日本豪雨の際、「赤坂自民亭」に出席していたことについて、「防衛省からは随時連絡が来ており、その都度指示を出していたので特に支障はないと思っている」と強弁していたが(朝日新聞デジタル 7月10日)、批判を浴びると「酒席の場で連絡を受けたり、報告をしたりしたということはない」と思いっきり前言撤回してみせたことがある(日刊スポーツ 7月13日)。