「今、お父さんに言ってあげたいことは」「私がお父さんと代わってあげたいです。早く家に帰ってきて欲しいです」――交際を続けるために娘(当時16)を脅し続けた38歳の恋人を殺害した父親(42)。この事件は地元の同情を集め、ついには1万2000人もの減刑を求める嘆願書が裁判所に提出される事態に…。裁判所が父親にくだした罰とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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娘の交際相手に包丁を突き出した父親
「お父さんとお爺ちゃんが殺される!」
「一体、どうしたんだ?」
熊野が理由を聞いても、泣いて首を振るばかり。
その2日後、ミユキの母親が青山の車から降りてくるミユキの姿を見かけた。慌てて車に駆け寄ると、青山は脱兎のごとく逃げてしまった。
「どうしてまた会ってたの? ワケを話しなさい」
それでもミユキは何も話さない。どうしてミユキは黙り込んでいるのか。
だが、そのことを知った熊野と祖父は激怒し、2人で青山の自宅を訪れた。
「息子は出かけていますが……」
例によって、青山の母親が対応した。
「では、戻ったらすぐに連絡するように伝えてください」
その帰り道、青山の母親から電話があり、「息子が帰ってきた」と報告があった。それでもう一度引き返したが、青山は熊野が着く前に再び逃げてしまった。
熊野は激怒し、家に戻ってミユキから青山の携帯番号を聞き出した。「今すぐ家に来い!」と呼びつけると、青山がふて腐れた様子でやって来た。
熊野は青山とソファに座って向かい合い、「二度と娘には会わないと言ったのに、なぜ会ったのか?」と問い詰めた。しかし、青山は謝るどころか開き直り、逆に食ってかかってきた。
「お宅の娘から電話があったんだ。今日は彼女の誕生日だったから、プレゼントを渡した。それの何がいかんのだ?」
「何だと……」
2人は立ち上がってにらみ合い、熊野は用意していた包丁を突き出した。
「もう二度と娘には近づかないと約束しろ!」