「オレを誰やと思っとるんや。仕事の上では神やぞ。お前なんかクズや。逆らえると思っとんのか」
正社員になる夢を抱く下請け会社の女性をダマして、卑劣な犯行に及んだ46歳、日本トップ企業に勤める男。女性を退職にまで追い込んだ悪質手口とは? この卑劣漢にくだされた罰とは? 2009年に起きた事件の顛末を3回に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の1回目/続きを読む)
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加害者は「トップ企業の課長代理」
倉田巧(当時46)は高校卒業後、日本最大手の電気通信会社に入社した。元高校球児で押しが強く、事件があったときには営業所の課長代理になっていた。
倉田の仕事は、光回線サービスを契約する際のプロバイダーの斡旋など。そのため、各プロバイダー会社は自社と契約してもらうため、“倉田詣で”を主な営業活動にしていたほどだった。
「オレは仕事の上では神や。オレに逆らったら、地元では仕事はできん。仕事を失いたくないだろう」
常日頃から、こんな威圧的な態度を取っていた。
そのうちの1社の営業担当をしていたのが、のちに被害者となるA子さん(同23)だった。
A子さんは短大卒業後、飲食店アルバイトなどを経て、プロバイダーの下請け会社の契約社員として採用された。親会社から業務委託を受け、自社と契約してもらえるよう、営業活動するのがA子さんの仕事だった。
事件の3カ月前、先輩社員に連れられて、電気通信会社の営業所で出会ったのが、外部業者との窓口になっていた倉田だった。
「あの人には逆らわない方がいいよ。気に入られないと営業所にも入れなくて、廊下で仕事のやり取りの電話をするしかないような営業マンもいるからね」
A子さんは上司や先輩が倉田にペコペコする姿を見て、「これが社会なんだ…。私も機嫌を損ねないように注意しよう」とイヤでも自覚させられた。
「正社員になりたい」彼女を襲った魔の手
まもなくA子さんは先輩社員から仕事を引き継ぎ、“倉田詣で”をするようになった。A子さんにとっては仕事の実績を上げ、「正社員になる」という夢があったため、“倉田詣で”は最重要課題だった。
幸いにもA子さんは倉田に気に入られ、電気通信会社の関連企業などにも同行し、「この子が営業しているプロバイダーを推したってな」などと口利きしてもらえるほどになった。
A子さんは常に営業スマイルを絶やさず、積極的に倉田に連絡し、「私もお酒が好きなんです。今度飲みに誘ってください」などと言って、円満な関係を保つための努力をしていた。
娘ほども年が離れた取引先の女子社員に慕われ、倉田もまんざらでもなかったに違いない。だが、その立場を利用して、倉田の欲望はA子さんの肉体へと傾いていったのである。
事件当日、A子さんは倉田に営業先の紹介を頼み、倉田はA子さんに自分の部下の女子社員を紹介するという名目で、ターミナル駅近くの居酒屋で飲む約束をした。
終電間際まで3人で談笑し、倉田の部下の女子社員が「そろそろ帰ります」と言うので、A子さんもそれで引きあげようとしていたが、倉田は「近くに同級生のママがやっているバーがあるんだ。オレに付き合えよ」と言って、A子さんをタクシーに乗り込ませた。
そこで1時間ほど飲んだ後、2人でターミナル駅に向かい、A子さんが「そろそろタクシーで帰りますので…」と言うと、倉田は「明日も朝から一緒に仕事だろう。何で帰るんだ。一緒におればええやないか」と言って、自分でタクシーをチャーター。近くのラブホテルに乗りつけた。
まるでヤクザのように豹変
「そんな…、私、困ります」
「何もせえへんから」
「ホテルに一緒に泊まるのは、仕事じゃないですよね。それは無理です…」
すると、倉田は人格が豹変して、ヤクザ口調で怒鳴りつけてきた。
「オレを誰やと思っとるんや。仕事の上では神やぞ。お前なんかクズや。逆らえると思っとんのか」
A子さんは倉田の勢いに押され、強引に部屋の中に連れ込まれた。

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