権力差を利用して、下請け会社の契約社員の女性(23)に性暴力をふるった、日本最大手の電気通信会社に勤める46歳男。この事件はどんな結末を迎えたのか? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む)

男にくだされた罰とは…。写真はイメージ ©getty

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「無罪です」弁護側はわいせつ行為を否定

 不同意性交等罪がなかった時代とはいえ、倉田の弁護人の主張はこんな具合だ。

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「倉田さんは無罪です。この事件は彼女にその気があるのではないかと思った男と、はっきり断らなかった女の間で起こった些細なトラブルにすぎません。倉田さんは無理やり性的なことをしようと考えたことはないし、脱出を困難にした事実もありません。胸を舐めたり、陰部に指を入れたことは認めます。しかし、A子さんは黙って応じていた。暴行や脅迫もありませんでした。倉田さんは鈍感だったかもしれませんが、犯罪ではない。検察官は有罪であることを立証できないでしょう」

 法廷にはビデオリンク方式でA子さんが検察側証人として出廷した。

検察官:事件当日はどのような服装で行きましたか?

A子さん:白のカッターシャツにベージュのズボンで行きました。自宅に帰ってからパンツの紐が引き裂かれていたのに気付いた。ブラジャーも紐が取れていました。

検察官:事件後、仕事には行きましたか?

A子さん:行っていません。もう二度と被告人と会いたくなかった。会社も私を引き止めようとはしなかった。正社員を目指して頑張っていたのに辛いです。

検察官:事件後に変化はありましたか?

A子さん:電気通信会社に関するものを見ると、思い出して辛くなる。ホテルの最寄り駅にはもう行きたくない。新しい仕事を始めたが、以前の勤務先があった駅には降りられなくなってしまった。

検察官:被告人に金銭を要求したことはありませんか?