「家に入った泥棒が先輩だったなんて…、信じられない。何のために警察学校へ行っていたのか。もう二度と会いたくありません」
友人女性の住居に不法侵入を繰り返した22歳の現役警察官。いったいなぜそんな暴挙を繰り返したのか? 2016年の事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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犯人の正体は…
小沢は運動神経抜群の男で、シティーマラソンで優勝したり、高校時代までは野球部に所属していた。中学時代に職場体験で消防署へ行ってから、「将来は消防士になりたい」という夢を持っていたが、高校卒業後に消防士の採用試験を受けたところ、体力テストでまさかの不合格。
小沢はショックを受け、その後は大学に進んだが、消防士になるという夢を捨て切れず、夕食後にトレーニングに出掛けるようになってから、祐奈さんの自宅を覗くようになったらしい。
祐奈さんとは面識はあるが、しゃべったことはなかった。一方的に思いを募らせて覗きや住居侵入を繰り返し、寝顔をスマホで撮影したり、時には体を触ったりしていた。
大学卒業後、再び消防士の採用試験を受けたが、またも不合格。代わりに警察官の採用試験には合格したが、この頃には祐奈さんとは別個の新たな事件を起こしていた。
小沢は高校時代の1年後輩で、遊び友達でもある林郁代さん(22)の自宅に侵入。郁代さんの財布から現金6000円を抜き取り、その日に泊まりに来ていた友人の女性(22)のパンティーとブラジャーも盗んだ。
それがないことに気付いた2人の訴えで家族が調べたところ、郁代さんの2階の部屋の窓枠に手の跡のようなものが残っており、その真下にある給湯タンクの上には靴跡が残っていた。郁代さん宅では、その1カ月前にも給湯タンクの換気口が壊され、部品を隣家の敷地に投げ捨てられるという被害に遭っており、「今度は看過できない」と警察に届け出た。
一方、小沢は被害者の郁代さんに〈警察学校に行くから、これからは連絡が取りづらくなる〉などとLINEを送っており、郁代さんはまさか小沢が犯人とはつゆほども思っていなかった。
その後、小沢は郁代さん宅にも侵入を繰り返すようになった。小沢の手口は窃盗犯の間では定番の「こじ破り」というものだ。マイナスドライバーを窓枠とガラスの間に2~3回突き刺すだけ。それだけでガラスは三角形に割れるのだ。