「刺せるもんなら、刺してみろ!」
しかし、青山は小バカにしたような態度で、「刺せるもんなら、刺してみろ!」と挑発した。
カッとなった熊野は、青山を突き飛ばし、倒れ込んだところを腹部目がけて突き刺した。その刺し傷は深さ19センチにも及んでいた。それほど父の怒りはすさまじかったのだ。
青山は「くそーっ……」と言って起き上がろうとしたので、熊野はさらにもう1度突き刺した。青山は虫の息となり、我に返った熊野は自分で110番通報し、駆けつけた警察官に緊急逮捕された。
「どうしても娘と別れさせたかった」
「自分と同年代の男が高校生の娘と交際しているのが許せなかった。被害者に挑発され、カッとなってしまった。娘はまだ人生経験が浅い。どうしても娘と別れさせたかった。事件当日も警察に相談したが、『今回の件では事件にならない』と言われ、もう自分で動くしかないと思った。彼の2人の子どもたちには申し訳ないことをしたと思う。責任を持って、自分が面倒を見ていきたい」
青山は中学卒業後、左官として働いたがすぐ辞めてしまい、遊んでばかりいた。19歳で最初の結婚をしたが、2年で離婚。24歳で再婚し、2人の子どもをもうけたが、まもなく離婚してしまった。
その後、両親と5人で暮らし、出稼ぎなどに行っていたが長続きせず、ハローワークに行っても就職が決まらなかった。そこで金づるにしていたのがミユキだった。
ミユキは熊野の公判に情状証人として出廷した。
弁護人:お父さんはどんな人ですか?
ミユキ:怒っても手を上げたりしない優しい人です。
弁護人:お父さんが事件を起こしたときの気持ちは?
ミユキ:人の命がなくなったけど、解放されたという気持ちでした。
弁護人:被害者とはどのくらい付き合っていた?
ミユキ:半年ぐらい。男女関係はありました。
弁護人:両親から反対されていましたね?
ミユキ:高校生であることや将来のこと、年齢差から反対されていた。交際をやめなかったのは、相手から何をされるか分からなかったから。
弁護人:お金の要求は?
ミユキ:ありました。お年玉から3万2000円を貸しましたが、返してもらえませんでした。
弁護人:なぜお父さんはこんなことをしたのだと思う?