ホテルの会場内には、モーツァルトのフルート四重奏曲が優雅に流れていた。
4月17日午後1時半、ふと腕に光る金色の高級時計に目を向け、司会者を指差したのは、金融コングロマリットを牛耳るグループの総帥。開始のアナウンスと共に歩き出し、壇上の椅子に座る。そして、一際大きな声でこうぶち上げた。
「第三者委員会の報告書で僕は堀江君に悪いことしたな、と。20年前の判断は、珍しく外れていた。そういう中でいよいよ本格的に動くことを決意したんです」
因縁の「堀江君」だけではない。「村上さん」の名前も飛び出した。
「村上さんも随分買われて、5%以上お持ちになり、更にそこから買い進められているということですから」
声の主は、SBIホールディングスの総帥、北尾吉孝会長兼社長(74)。かつて“敵”だったライブドア元社長の堀江貴文氏(52)や、旧村上ファンドを率いた村上世彰氏(65)と共に、「本格的に動く」と宣言したのだ。狙いはもちろん、フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)である。
最終利益は前期比73.6%減
中居正広(52)の女性トラブルに端を発したフジHDを巡る問題は、未だ収束の気配を見せていない。
今年3月期通期決算はCM差し止めの影響で、最終利益が前期比73.6%減の98億円に落ち込む見通しだ。3月27日には、グループ代表の日枝久氏(87)が退任の意向を表明。31日には、第三者委員会で中居の「性暴力」が認定されるに至った。ただ、苦境とは裏腹に株価は急騰。年明け時点では1600円台で推移していたが、直近では3000円台に突入している。
遡ること20年前。現在と同様にフジテレビが市場を揺るがしたのが、2005年のライブドア事件だ。