元タレントの中居正広と女性とのトラブルを巡るフジテレビの一連の問題で、同社と親会社のフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会が3月31日、調査報告書を公表した。報告書は「女性が中居氏による性暴力の被害を受けた」「重大な人権侵害が発生した」と認定し、性暴力は「業務の延長線上」だと認められるとも指摘。

 また、中居から相談を受けた編成幹部が弁護士を紹介していたと事実の認定が行われた。この弁護士に関して、社員が24時間すぐに携帯電話で法律相談できる体制がつくられており、港浩一社長(当時)が「携帯弁護士」と呼んでいたことも認定された。

 今年2月、「週刊文春」は中居と女性を引き合わせたフジテレビ編成幹部を独占直撃し、話を聞いていた。女性の悲痛な訴えがありながら、なぜコンプライアンス部門に報告すらしなかったのか。なぜトラブル把握から1年以上にわたって、中居の番組を存続させたのか? そして弁護士の紹介について語っていたこととは? 当時の記事を全文公開する。

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(初出:「週刊文春」2025年3月6日号。年齢、肩書は当時のまま)

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 当初、中居はX子さんとの関係について修復できるものと踏んでいた。

「中居くんは周囲に『合意(の上)だったんだけどな』と話していた。その根拠として、事件直後にX子さんが中居くんに感謝を述べるショートメールを送ってきたことなどを挙げていました」(中居の知人)

中居正広 ©文藝春秋

 だが、中居から受けた“被害”は、次第にX子さんの心身を蝕んでいく。彼女が入院を余儀なくされたのは同年7月中旬のことだ。

 同じ頃、中居はX子さんとのトラブルについて、フジテレビの編成幹部A氏にも告げている。

「彼は、A氏に『X子と揉めている』と漠然とした内容を伝え、あるものを託したのです」(同前)

 彼女の入院先を訪れたA氏は病院のスタッフに対して「これ、中居さんからです」と言い、紙袋を置いていった。中には、中居から託された見舞いの品、スマホスタンド、さらに20万円前後の金銭が入った封筒があった。

フジの“お抱え弁護士”が中居の代理人に

 闘病生活を続ける中でX子さんは警視庁に被害届を提出することを考えたが、示談交渉の末に中居が多額の解決金を支払うことで合意する。

 翌年1月、事件当日の出来事を双方口外しないと約束し、それを破った場合には賠償責任を負う前提で示談書が交わされた。

「その結果、X子さんは中居くんに刑事罰を求めることはありませんでした。示談に向け、彼の代理人となったのが犬塚浩弁護士でした」(同前)

 犬塚弁護士とフジの関係は長い。1990年代には、ワイドショー「おはよう!ナイスデイ」に出演。バラエティ番組「ザ・ジャッジ!〜得する法律ファイル」に「顧問弁護団」として出演した他、A氏が制作統括を担った「ワイドナショー」にもレギュラー出演していた。

フジと縁の深い犬塚弁護士(第二東京弁護士会のHPより)

 まさにフジのお抱え弁護士というべき存在だ。

「中居さんは本来、フジが調査すべき対象。それなのに、フジと縁の深い犬塚弁護士に示談交渉を依頼した。このことは社内でも疑問視されていました」(フジ社会部記者)