風雲急を告げる第三者委員会による調査、そして待ったなしのフジの再建。

 その鍵を握ると目されているのが、社長、会長、相談役として36年の長きにわたりフジの実権を握ってきた“フジの天皇”日枝久取締役相談役である。

日枝氏の去就に注目が集まる ©文藝春秋

 10時間超の記者会見から一夜明けた1月28日。日枝氏の姿は、大阪・北新地にあった。繁華街に聳える高級ホテルに投宿すると、夕刻、迎えのハイヤーを待つ。数分で辿り着いたのは、湯豆腐の名店だった。

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 同伴のホステスと共に客で賑わう店内で落ち合ったのは、関西テレビ放送の福井澄郎会長である。

日枝氏と福井氏(左)の密談は実に4時間以上におよんだ ©文藝春秋

「日枝氏は少なくとも系列の地方局6社の取締役を兼務していますが、大した仕事はない。例えば、NST新潟総合テレビから日枝氏が受け取る役員報酬は数千万円ですが、目立った仕事と言えば、新潟名物のへぎ蕎麦を食べに行く“美食会”ぐらいです」(別のフジ元幹部)

カンテレの会長は“腹心中の腹心”

 だが、日枝氏にとってカンテレは別格だという。

「福井会長は日枝氏の腹心中の腹心。日枝氏は毎月のように取締役会に参加しています」(同前)

 福井氏が同社の社長に就任したのは08年。19年に取締役相談役に退いたが、昨年6月には代表取締役会長に返り咲いた。日枝氏の鶴の一声である。

「現在、福井氏は日枝氏の抜擢により産経新聞社の取締役、サンケイビルの監査役にも名を連ねています。実は、日枝氏は福井氏の秘書部長だった女性を気に入り、取締役会の前日に関西に前乗りすると、3人でカラオケを楽しむというのがお決まりのコース。未曾有の危機に際し、社内では『福井氏をフジの要職に招くのではないか』という憶測もあった」(同前)

 2月22日、福井氏の自宅を訪ねた。

——会見翌日、日枝氏と北新地で会食した?

「日枝さん疲れていたけど、元気ですよ。その日は特別に来たわけじゃなくて、翌日はうちの取締役会ですから前乗りされるんです。秘書部長とのカラオケは、だいぶ昔の話で、今はやっていません(笑)」

 福井氏 ©文藝春秋

——日枝氏からは今後の人事を相談された?

「今後のことはわかりませんし、私が呼ばれることは絶対にありえない」