4月19日、快晴の土曜日。「週刊文春」記者が訪ねたのは、兵庫県尼崎市の埋め立て地に設えられた「ひょうご楽市楽座」。大阪・関西万博会場へのシャトルバス発着場の隣で、万博期間中の毎週末に開催しているイベントだ。地元の事業者が出店するテントやキッチンカー、ステージイベントなどで大いに盛り上がっている――はずだった。

斎藤元彦兵庫県知事 ©︎時事通信社

巨額の“万博予算”を計上

 斎藤元彦知事(47)は就任当初から万博にやたらと力を注いできた。

「大阪府の財政課長を経て、維新・自民の推薦で2021年の知事選で当選。特に万博については吉村洋文知事と歩調を合わせてきた。4億円補助金疑惑が指摘される阪神・オリックス優勝パレードも“大阪・関西万博500日前!”と銘打たれ、半ば万博の宣伝になっていました」(県関係者)

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 事務方のトップ、県の万博推進局長も続ける。

「知事も兵庫県出身者としてこの機会を生かしたいと思っている。(大阪の)万博会場の中だけでなく、県内でどう盛り上がっていくか。フィールドパビリオン(県内各地で地域の魅力を発信する取り組み)など、関連イベントを全県展開していますから、金額も積み上がると思います」

万博会場に巨大なミャクミャクが

 実際、過去3年分の万博予算を確認すると、約45.6億円。財政規模が異なるとはいえ、例えば京都府の約10.7億円と比べれば4倍以上だ。

 その内訳を詳しく見てみよう。例えば斎藤氏の肝煎り事業の一つが、社会実装の実現を目指すとしている「空飛ぶクルマ」。過去3年間で関連事業に計約2.5億円を計上している。

「昨秋の知事選で斎藤氏のSNS戦略を担ったとされ、現在公職選挙法違反の容疑で捜査を受けているPR会社『merchu』の折田楓社長(33)も関わっている。折田氏は23年度、県の『次世代空モビリティひょうご会議』委員に抜擢され、インスタなどで空飛ぶクルマをPRしていました」(前出・県関係者)

県庁内では不評の「ひょうご楽市楽座」

 もう一つ、斎藤氏が宣伝を重ねていたのが、冒頭で触れた「ひょうご楽市楽座」だ。24年度、25年度の2年間で約4.2億円の予算を計上している。

 ただ、県庁内の評判は芳しくない。

「県職員は今後、イベントが開催される週末、午後4時から9時まで拘束されることになりました。夕方開催なのはシャトルバスで帰ってきた万博観光客のおこぼれにあずかる狙いですが、万博で足が棒になったお客さんが今更、キッチンカーにお金を落としてくれるとは考えづらい。一般の県民が来るかと言えば、会場周辺は工業地帯と空き地だらけで便利な公共交通機関もない。自家用車で来てもビールも飲めないわけですから……」(県職員)

楽市楽座も関係者の姿の方が多い

 実は、このイベントについて一時、大幅な縮小が検討されていたという。

「斎藤氏が失職した昨年9月から10月頃、費用対効果が乏しいため、担当部署は事業を大幅縮小することを議論していた。ところが、再選後に斎藤氏が『なんで縮小するの?』と、そのままの規模での開催をゴリ押ししたんです」(同前)

 4月23日(水)正午配信の「週刊文春 電子版」および24日(木)発売の「週刊文春」では、「週刊文春」記者による万博「兵庫県ゾーン」と「ひょうご楽市楽座」のルポや地元・神戸新聞の子会社が県の万博事業に深く関わっている実態などを詳しく報じている。

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